いつものペットフードをアレンジして食事を楽しませたい、栄養のあるものを食べさせたいなど、犬を飼っていると毎日の食事に気を使うものです。
冬が旬のほうれん草はおいしいし栄養満点で与えてみたい野菜ですが、環境省が発表している「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」では、与える際に注意が必要なものとして記載されています。
一体どのようなことに気を付ければほうれん草の栄養を安全に犬に与えることができるのか、ほうれん草を与えるメリットと一緒に確認してみましょう。
愛犬はほうれん草を食べられる?
結論から言えば、犬はほうれん草を食べることができます。
ほうれん草は多量のミネラルやビタミンを含んでおり、ぜひ愛犬にも食べさせてほしい野菜です。
ただし、与える際の気をつけるポイントが幾つかありますので、飼い主さんはしっかり知識をつけてほうれん草を与えるようにしましょう。
ほうれん草は食べていい
犬は人間と同様にほうれん草を食べてもいいとされています。
ほうれん草はミネラルやビタミンを多量に含み、犬にもぜひ食べさせてほしい野菜の一つです。
しかし、ほうれん草に含まれるシュウ酸とよばれる成分が尿路結石を引き起こす可能性があるため、与える際にほうれん草にふくまれるシュウ酸を除去する工夫が必要になります。
生のほうれん草
生のほうれん草には、えぐみを強く感じさせる「アク」が多量に含まれています。
この「アク」の正体はシュウ酸です。
シュウ酸は尿路結石を引き起こす可能性があり、えぐみも強く感じ嗜好性も低いため、生のほうれん草を愛犬にあげることはおすすめしません。
茹でたほうれん草
ほうれん草の「アク」とよばれるシュウ酸を取り除く一番有効な手段はお湯で茹でることです。
「公益財団法人日本医療機能評価機構」の発表によると、ほうれん草を3分間お湯で茹でるとシュウ酸を37%〜51%除去できるとされています。
シュウ酸を完璧に除去することはできませんが、かなりシュウ酸の含有量をへらすことができ、ほうれん草自体のえぐみもなくなることで食べやすくなります。
愛犬にほうれん草を与える際には、茹でたほうれん草を与えるようにしましょう。 ただし、塩ゆでや味付けなどはしないようにしましょう。塩分過剰になる可能性があります。
冷凍したほうれん草
冷凍したほうれん草も、一度茹でたものを冷凍したものならシュウ酸含有量が減少しているため与えても大丈夫です。
また、解凍する際に自然解凍ではなく、流水など水を使って解凍することでさらにシュウ酸含有量をへらすこともできます。
ただ、冷凍ほうれん草を使用する際には、塩ゆでしてないものがおすすめです。
塩分過剰になり、愛犬の健康状態を悪化させる可能性もあります。
表示には、「ほうれん草」のみしか書いていないものを選ぶようにしてください。
茎や根
基本的にきちんと洗っていれば、根本の赤い部分まであげても良いです。
ただ、茎や根っこの部分は硬いため、消化吸収しやすいように、細かく刻んで与えてあげましょう。
ほうれん草の栄養素と犬へのメリット
ほうれん草は、愛犬の健康にとって重要なビタミンやミネラルを多量に含まれています。
ここからは、ほうれん草に含まれる栄養素とその効果について解説していきます。
ビタミンB
ほうれん草には、ビタミンB1やビタミンB2などのビタミンB群が含まれています。
ビタミンB群は、エネルギー代謝や赤血球の構成成分など体内で重要な役割を果たしてくれます。
このビタミンB群は、働きも多く水溶性で損失しやすいため、食事からの十分な摂取が必要になります。
ビタミンB群を補給するためにも、ほうれん草を与えていきましょう。
βカロテン
βカロテンは、体内でビタミンAに変換され栄養として利用されます。
ビタミンAは、皮膚、粘膜、目の健康に役立つ以外にも細胞の障害を防ぐ抗酸化作用や免疫力向上、がん予防効果もあり、愛犬の健康を担う非常に重要なビタミンです。
ビタミンE
ビタミンEもビタミンAと同様に抗酸化物質として知られています。
肥満や病気などで発生する活性酸素による酸化で細胞が傷害を受けるのを防ぎます。
ほうれん草には、抗酸化物質であるβカロテンやビタミンEが多量に含まれているので愛犬の健康には非常に有効な食品です。
ビタミンK
ビタミンKは、血液凝固にかかわるビタミンです。 もし、このビタミンKが欠乏すると出血が止まりにくくなる可能性があります。
また、骨の形成にも不可欠でカルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す作用もあります。
鉄分
ほうれん草には、鉄分が多量に含まれています。
鉄分には、血液中のヘモグロビン合成を促す働きがあり、貧血の予防や改善にもつながります。
あまりご飯を食べない子や腎臓病の子などは貧血傾向に陥りやすいので、ほうれん草を与えることで貧血を予防していきましょう。
カリウム
ほうれん草には、カリウムが100gあたり500mgと多量に含まれています。
カリウムは体内の余分な塩分を排泄する作用があり、高血圧や体内のむくみを取るのに役立つ重要なミネラルです。
しかし、腎臓病の子にはカリウムの摂取を制限をする必要がある子もいます。
ほうれん草を与えるときには、腎臓病になっていないかどうかをしっかり調べて、獣医師さんと相談してから与えるようにしましょう。
マグネシウム
マグネシウムは、骨や歯、筋肉の収縮に必須の成分です。
さらに、心臓の健康維持にも欠かせないミネラルです。
体内のマグネシウム濃度が減少するとうっ血性心不全や不整脈など、様々な心臓血管系に悪影響を及ぼすとされています。
カルシウム
骨や歯の健康維持に重要なミネラルです。また、ストレス解消にも効果を発揮します。
特に、アレルギーなどで動物性のカルシウムを摂取することができない子には、積極的にほうれん草を与えることでカルシウム不足を改善することができます。
食物繊維
ほうれん草に含まれる食物繊維は、腸の調子を整えて便秘の改善や予防にもなります。
ただ、犬は食物繊維の消化が得意ではないので、与えすぎると下痢をする可能性もあります。与えすぎには注意しましょう。
愛犬に与えて良いほうれん草の量
ほうれん草は低カロリーですが、食べ過ぎはシュウ酸や食物繊維のとりすぎにつながり、体に悪影響を及ぼす可能性もありますので適切な量を与えるようにしましょう。
ほうれん草を与える際の量については、以下の表にまとめてます。
*健康な成犬の場合です。
犬の体重 | 1日に摂取できるほうれん草の量(g) |
超小型犬(4kg未満) | 茹でたほうれん草1/2株(25g) |
小型犬(10kg未満) | 茹でたほうれん草1株分(50g) |
中型犬(25kg以下) | 茹でたほうれん草2株分(90g) |
大型犬(25kg以上) | 茹でたほうれん草2~3株分(100~140g) |
栄養豊富とはいっても、与える量が多すぎると嘔吐などの体調不良を引き起こします。
犬が一日に摂取できるほうれん草の量は、体重によって変わります。
体重が4キロ未満の超小型犬の場合、1日に25グラムまでが適量です。
25グラムというと、ほうれん草1株を茹でて水分を絞った物の半量程度になります。
体重10キロ未満の小型犬の場合は、1日50グラムまでが適量とされています。
茹でて絞ったほうれん草1株分が目安です。
体重25キロ以下の中型犬は一日90グラム、体重25キロ以上の大型犬は100グラムから140グラムまでとされています。
一度に食べるのではなく一日複数回に分けて与えましょう。
子犬の場合は慎重に与える必要があります。
子犬はまだ消化器官が未熟でほうれん草をうまく消化できるかわからないことと、アレルギーなどを引き起こすと重篤な症状となる可能性があるためです。
もし与える場合はごく少量にするなど、子犬の様子をよく確認しながらにしましょう。
成犬でも同じですが、無理に与えることはありません。
ほうれん草を与えるときは飼い主の思いだけではなく、犬の健康によい影響があり、犬も喜んで食べることが大切です。
犬にほうれん草を与えるときの注意点
ほうれん草には多くの体に良い栄養素が含まれているので、ぜひ愛犬に食べさせてあげたい野菜です。
しかし、ほうれん草を与える際にはいくつか注意する点があります。
小さくカットしてあげる
ほうれん草は、食物繊維が豊富であり不溶性食物繊維は体内で水分を含んで膨らみます。
そのためよく噛んで飲み込む必要がありますが、犬の場合は丸のみしてしまうことが予想されるので、あらかじめ細かく刻んでおきましょう。
小さくカットすることで、ビタミン、ミネラルなどの栄養素も消化吸収されやすくなります。
与えすぎない
ほうれん草には、多量のビタミン、ミネラルが含まれていることから、与えすぎる飼い主さんもいるかもしれません。
ただ、ビタミン、ミネラル以外にもシュウ酸や食物繊維が含まれていますので、過剰摂取は尿路結石や下痢の原因になる可能性があります。
愛犬に適切な摂取量の範囲で与えるようにしましょう。
食後は水を飲ませる
ほうれん草はシュウ酸を多量に含み、尿路結石の原因になる可能性があります。
尿路結石の予防のために、食後にしっかりと水を飲ませシュウ酸などの結石のもととなる物質を尿から排出させることも大切なので、ぜひ取り組んでみてください。
アレルギー
ほうれん草を食べた後に、体を痒がったり、目の充血や口まわりに赤みがでる場合または、下痢や嘔吐が認められた場合は、ほうれん草に対するアレルギーがある可能性があります。
このような症状が認められた場合は、ほうれん草を与えることは控えたほうが良いです。
また、はじめてほうれん草をあたえる場合は、アレルギーの症状がでる可能性を考慮して、 少量ずつあげてあげましょう。
病気
ほうれん草は、栄養素を多く含んでおりぜひ愛犬に食べさせてほしい食品の一つですが、 過剰摂取が病気に関わる可能性もあるので注意が必要です。
尿路結石
ほうれん草に含まれるシュウ酸は体内でカルシウムと結合してシュウ酸カルシウム結石となり尿路結石の原因になる可能性があります。
この結石は一度できてしまうと、食事療法などで溶かすことが不可能な結石として知られており、根治が大変な疾患です。
栄養素の豊富なほうれん草ですが、過剰摂取は尿路結石の原因になりますので適切な摂取量の範囲で与え、尿路結石があるような子には与えないようにしましょう。
ほうれん草を上手に使って健康的な食事を楽しもう
ほうれん草に含まれる栄養素は、犬の貧血やがん予防、骨を丈夫にしたり若さを保ったりと、犬にも飼い主にもうれしい効果が得られるものばかりです。
彩りがよく、刻んだりすりつぶしたりすることでアレンジもしやすいので毎日の犬の食事がおいしく、楽しくなります。
しかし、過剰に与えすぎたり、下ごしらえを怠ったりすると逆に犬の健康を損なってしまうので気を付けたい食材です。
いつまでも元気な犬と暮らせるように、上手にほうれん草を食事に取り入れてみてください。
ほうれん草以外にも愛犬にあげて良いか気になる方は以下をご覧ください