「甲状腺機能低下症の愛犬が食べても平気な手作り食のポイントが知りたい!」
と思う飼い主さんは多いのではないでしょうか?
飼い主さんは、この記事を読むことで、甲状腺機能低下症の犬に手作りご飯を与える際のポイントや控えるべき食材を理解でき、手作り食の幅を広げることができます。
簡単に普段の食生活に取り入れることができるので、ぜひ参考にしてみてください。
甲状腺機能低下症の愛犬の手作りご飯のポイント
甲状腺機能低下症の犬では、タンパク質や脂質、ミネラルなどの栄養代謝が乱れていることが知られており、与えるご飯も注意しなくてはいけません。
甲状腺機能低下症の犬に手作りご飯を作ってあげる場合には、以下の4つのポイントに気をつけてあげましょう。
- 低脂質
- 低カロリー
- 消化しやすいタンパク質
- 低糖質
それぞれについて解説していきます。
低脂質
甲状腺機能低下症の犬には、低脂質の食事を与えるようにしましょう。
甲状腺機能低下症の犬は脂肪代謝に異常があり、高脂血症や高コレステロール血症になっていることが多いです。
高脂血症や高コレステロール血症は、以下のような病気の原因となります。
- 膵炎
- 胆嚢疾患
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
これらの病気は重症化すると命に関わるものもありますので、注意が必要です。
また脂肪は、与えるにしても、良質な脂肪を与えるようにしましょう。
酸化していない新鮮な脂肪、オメガ3脂肪酸が含まれている脂肪などがおすすめです。
青魚や新鮮な肉には、良質な脂肪が含まれていることが多いのです。
飼い主さんは、低脂肪かつ良質な脂肪を含む食事を与えるようにしてあげましょう。
低カロリー
甲状腺機能低下症の犬の食事では、低カロリーの食事を心がけるようにしましょう。
甲状腺機能低下症の犬では、基礎代謝の異常により肥満傾向になることが知られています。
カロリーの高い食事をとってしまうと、カロリー過多によりさらに肥満傾向になってしまいます。
肥満は万病の元であり、心臓病や糖尿病を引き起こします。
脂肪、炭水化物などカロリーが高い食材は愛犬の食事では、あまり多く使わないようにして、低カロリーの食材を使うようにしてあげてください。
消化しやすいたんぱく質(加熱しない)
甲状腺機能低下症の犬では、良質で消化しやすいタンパク質を与えるようにしてあげましょう。
甲状腺機能低下症の犬では、タンパク質の代謝にも異常がみられます。
また、皮膚が薄くなったり、ハリがなくなったり、脱毛を起こすこともありますので、タンパク質をしっかり与えてあげることが大切です。
良質で消化しやすいタンパク質とは、「アミノ酸バランスが取れた低脂肪のタンパク質」のことです。
具体的には、以下のような食材が当てはまります。 鶏ささみ 鶏胸肉 魚肉 馬肉 鹿肉
調理する際には、強く加熱しすぎて、タンパク質が変性しないように、また感染を予防できるように適度に茹でてあげるのが良いでしょう。
ぜひ、愛犬に良質で消化しやすいタンパク質を与えてあげるようにしてください。
低糖質
甲状腺機能低下症の犬では、低糖質の食材を与えるようにしてあげてください。
糖質が含まれている食材は、甲状腺機能低下症の犬では、上手く代謝できず糖尿病を発症する恐れもあります。
また、肥満を引き起こし、以下のような疾患を併発することもありますので注意が必要です。 糖尿病 心臓病 副腎皮質機能亢進症
糖尿病の他にも、心臓に負担がかかってしまったり、副腎ホルモンの分泌が促され、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)と呼ばれる病気になってしまったりする場合があります。
飼い主さんは、甲状腺機能低下症を持つ愛犬には、低糖質の食事を与えて上記のような病気の併発を防いであげるようにしましょう。
甲状腺機能低下症の愛犬が控えるべき食材
甲状腺機能低下症の犬には、以下のような食材は控えるべきです。
- キャベツ、ブロッコリー(アブラナ科野菜)
- 大豆食品
- 海藻
- レバー
それぞれ、理由も含めて解説していきます。
キャベツ、ブロッコリー(アブラナ科野菜)
キャベツ、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜には、「ゴイトロゲン」と呼ばれる物質が含まれています。
この「ゴイトロゲン」は、甲状腺ホルモンの分泌を抑制すると言われており、甲状腺機能低下症の犬の病態を悪化させる可能性があります。
かなり過剰に摂取しないとほとんど問題ないと言われていますが、甲状腺機能低下症の犬には、控えてあげるか、与えるとしても少量与えるだけにしておきましょう。
大豆食品
大豆食品も甲状腺機能低下症の犬には、控えてあげるべき食材です。
大豆食品には、
- 「大豆イソブラボン」
- 「ゲニステイン」
- 「ゴイトロゲン」
といった甲状腺ホルモンの機能を低下させる物質が含まれています。
また、大豆食品は、甲状腺ホルモンを生成する上で必要なミネラルを吸着する働きがありますので、注意しましょう。
大豆食品もかなり摂取しないと甲状腺に悪影響を及ぼすことは少ないですが、甲状腺機能低下症の犬では控えてあげた方が良いでしょう。
海藻
甲状腺機能低下症の犬には、海藻を与えることは控えてあげましょう。
海藻に含まれているヨウ素が、甲状腺機能を低下させてしまいます。
ヨウ素は甲状腺ホルモンを合成する一方で、体内にありすぎると甲状腺ホルモンが作られなくなります。
また、海藻は、消化不良を起こしやすい食材です。
特に、甲状腺機能低下症の犬では、消化管の機能が低下していることも多いため、お腹の調子を崩してしまうこともあります。
そのため、ヨウ素を多量に含み、消化が難しい海藻は甲状腺機能低下症の犬に与えない方が良いでしょう。
レバー
甲状腺機能低下症の犬には、レバーを与えることも控えてあげた方が良いでしょう。
レバーにも海藻同様にヨウ素が含まれており、甲状腺機能を低下させてしまいます。
他にもヨウ素を多量に含む食材は以下の通りです。
- かつお
- ヨード卵
- こんにゃく
- たら
- かまぼこ
- ホルモン
- ハツ
また、レバーは脂肪も多く含まれており、甲状腺機能低下症の犬では、高脂血症、高コレステロール血症の原因になることもあります。
甲状腺機能低下症の犬には、レバーを与えないようにしてあげましょう。
甲状腺機能低下症の愛犬におすすめの手作りご飯レシピ
ここからは、甲状腺機能低下症の犬におすすめの手作りご飯のレシピをご紹介します。
- おからと鶏肉の団子スープ
- カボチャとしめじのチキンスープ
- サーモンとほうれん草のおじや
それぞれに詳しくみていきましょう。
おからと鶏肉の団子スープ
おからと鶏ひき肉を使ったスープです。
低脂肪で良質なタンパク源であるおからと鶏ひき肉を使うことで、カロリーを抑えています。
低脂肪、低糖質なレシピになっているので、ぜひ愛犬に食べさせてあげましょう。
<食材>(2食分)
- 鶏ひき肉1パック
- おから20g
- 人参1/3
- 白菜30g
- じゃがいも2個
- 水300ml
<作り方>
- 白菜と人参を細かく切ってひき肉と混ぜ合わせる
- ①へおからを入れて混ぜ、食べやすい大きさの団子にする
- じゃがいもを一口サイズに切り、柔らかくなるまで茹でる
- ②の団子を③と一緒に煮込み完成
カボチャとしめじのチキンスープ
カボチャやしめじなどの食物繊維を多く含んでいるスープです。
甲状腺機能低下症では、消化管の動きが悪くなるため、便秘になりやすくなります。
便秘予防にこうした食物繊維を多く含むスープはおすすめです。
また、体温をあげて代謝をあげてくれる効果もあるので、ぜひ食べさせてあげましょう。
<食材>(8食分)
- カボチャ0.5個
- ナス1本
- 鶏肉300g
- ぶなしめじ1/2パック
- にんじん1/2個 水600ml
<作り方>
- 鶏肉、ぶなしめじ、かぼちゃ、にんじんを細かくきる 沸かした水に鶏肉を入れて茹でる
- ぶなしめじ、人参を②に加えて火を通す
- カボチャ、なすを入れ蓋をして弱火で10~20分煮込み完成
サーモンとほうれん草のおじや
サーモンには、ω3脂肪酸などの良質な脂肪が含まれています。
ω3脂肪酸は、体の炎症を抑えてくれるので、甲状腺機能低下症により体の代謝に異常がある場合には、非常におすすめの成分です。
飼い主さんは、ぜひ作って食べさせるようにしましょう。
<食材>(1食分)
- 炊いた白米40g
- サーモン10g
- ほうれん草10g
- コーン10g
- 水大さじ2
<作り方>
- サーモンは骨と皮をとって事前に茹で火を通す
- 鍋にサーモン、ほうれん草、コーン、水を入れ煮込む
- ②に炊いた白米を加えてある程度水分がなくなったら完成
犬の甲状腺機能低下症とは
甲状腺は、喉の下に左右一対ある小さな組織であり、甲状腺ホルモンを分泌しています。
甲状腺ホルモンは、体温の維持、エネルギーの生成、体の代謝などに必須のホルモンです。
甲状腺機能低下症とは、何らかの原因で甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンが分泌されなくなった状態のことです。
甲状腺機能低下症の好発犬種としては、以下のような犬種が考えられます。
- コッカー・スパニエル
- ゴールデンレトリーバー
- ボクサー
- ミニチュア・シュナウザー
- ミニチュア・ダックスフンド
- トイ・プードル
- 柴犬
老犬になってくると甲状腺機能低下症の発生率が上昇していきますので、飼い主さんは、愛犬がシニア期(7歳以降)に差し掛かってくると注意してみてあげるようにしましょう。
甲状腺機能低下症は、症状がはっきりしないことも多く、老化とも間違えやすい病気です。
定期的に動物病院を受診し、少しでも気になる点があれば獣医師に相談するようにしてください。
犬の甲状腺機能低下症の原因
犬の甲状腺機能低下症の原因は、以下の3つが考えられます。 先天性 原発性 2次性 それぞれについて解説していきます。
先天性
子犬の疾患として、クレチン病と呼ばれる先天的な甲状腺機能低下症があります。
この病気は、生まれつき甲状腺機能が低下しており、精神的、身体的に成長不良が認められることがあります。
症状としては、以下のようなものが考えられます。
- 成長不良
- 甲状腺が腫大する
- 黄疸
- 便秘
飼い主さんは、子犬に当てはまる症状がないかチェックしてみて、当てはまるようならば動物病院で検査してもらいましょう。
原発性
甲状腺機能低下症の原因の95%は、原発性です。
原発性とは、甲状腺自体に問題があり甲状腺機能が低下している状態のことです。
自己抗体が自身の甲状腺を攻撃し破壊してしまうことが、甲状腺機能低下の原因として考えられています。
他にも、甲状腺機能が低下してしまう原因としては以下のようなものが考えられます。
- 突発性の甲状腺萎縮
- 腫瘍による甲状腺組織の破壊
突発性の甲状腺萎縮が起こるメカニズムは、未だはっきりとわかっていません。
また、稀に甲状腺癌により甲状腺機能が低下している場合もあります。
この場合喉を触るとしこりのような物に触れることがありますので、飼い主さんは日頃から注意してみておきましょう。
2次性
2次性の甲状腺機能低下症とは、甲状腺自体には問題はないが、甲状腺に指令を出す脳下垂体に異常がある状態です。
脳下垂体は、甲状腺にホルモンを出させるために、TSH(甲状腺刺激ホルモン)を分泌しています。
何らかの原因で、このTSHが分泌されなくなった場合には、甲状腺ホルモンが分泌できず甲状腺機能低下症になってしまいます。
犬の甲状腺機能低下症の症状
犬の甲状腺機能低下症の症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 元気がない、筋力が落ちる
- 脱毛
- 顔がむくむ
- 神経症状
甲状腺機能低下症の症状の中には、症状がはっきりしないものもあるので、発見が遅れてしまいます。 飼い主さんは、愛犬に当てはまる点がないかどうかチェックしながら読んでみてください。
元気がない、筋力が落ちる
甲状腺機能低下症の犬では、代謝異常により、元気や活動性、筋肉量の低下がみられるようになります。
犬が甲状腺ホルモンの不足により代謝異常になると、
- 体温の低下
- 心拍数の低下
- 肥満
- 貧血
といったことが体の中で徐々に進行していきます。
はっきりとした症状ではなく、
- 「なんか最近元気ないな〜老化かな」
- 「ご飯の量変えてないのに太ってきたな」
という風に感じる飼い主さんが多いです。
こまめに愛犬の様子をみていないと、なかなか気づけないので、普段から注意深く愛犬の様子をみてあげるようにしてください。
脱毛
甲状腺機能低下症では、脱毛をはじめとして、皮膚にも異常がみられることが多いです。
皮膚にみられる異常としては、以下のようなものが考えられます。
- 尻尾の部分が脱毛する
- 色素沈着
- 痒みを伴わない脱毛
- 左右対称性の脱毛
- 皮膚バリアの低下
甲状腺機能低下症では、尻尾の部分だけ毛が抜けてしまいネズミの尻尾のようになってしまう「ラットテイル」と呼ばれる症状が特徴的です。
また、左右対称性に痒みのない脱毛がみられ、皮膚バリアの低下により細菌感染を起こしていることも多いです。
飼い主さんは、脱毛など気になる皮膚症状があれば、動物病院で診てもらうようにしましょう。
顔がむくむ
「顔がむくむ」という症状も、甲状腺機能低下症でよく認められる症状です。
これは、粘液水腫と呼ばれる状態を皮膚に作り出し、皮膚のたるみやハリが失われることが原因として考えられています。
悲しそうな顔になるため、「悲劇的顔貌(sad face)」とも呼ばれることが多いです。
この症状は、薬を投薬し甲状腺ホルモンを投与することにより、改善していくことがほとんどです。
飼い主さんは、老化と間違えやすい症状ですので、注意しましょう。
神経症状
甲状腺機能低下症は、稀に神経症状を引き起こすことがあります。
甲状腺機能低下症で認められる神経症状は以下の通りです。
- 前庭疾患
- 顔面神経麻痺
首がずっと傾いたままであったり、顔面の片側が動かなくなったりする症状が認められます。
こうした症状が認められた場合には、甲状腺機能低下症を疑い動物病院を受診するようにしましょう。
犬の甲状腺機能低下症の診断と治療法
犬の甲状腺機能低下症の診断は血液検査で行い、薬の投与により治療をしていきます。
ここからは、さらに詳しく解説していきます。
血液検査
甲状腺機能低下症を診断するためには、血液検査にて甲状腺ホルモンの値を検査することが必要です。
甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4)が0.5μg/dL未満の場合には、甲状腺ホルモンが分泌されていないと判断され甲状腺機能低下症である可能性が高くなります。
注意点としては、膵炎、クッシング症候群など他の疾患がそもそもある場合には、甲状腺ホルモンが不当に低下してしまうことがあります。
そのため、甲状腺ホルモンを計測する時には、他に疾患がないかどうかきちんと除外してから計測することが大切です。
検査代金としては、甲状腺ホルモン検査として約5000円ほどかかることがほとんどです。
薬
甲状腺機能低下症の治療は、「レボチロキシンナトリウム」と呼ばれる薬を投与し甲状腺ホルモンを補充してあげます。
この薬により甲状腺ホルモンを補充してあげますが、一度低下した甲状腺の機能は元通りになることはなく、生涯にわたる投薬が必要となることがほとんどです。
料金は1ヶ月で大体3000円〜5000円になることがほとんどです。
犬の甲状腺機能低下症の寿命は?治すことはできる?
一度甲状腺機能低下症になってしまった場合残念ながら、完治することはなく、生涯にわたっての投薬が必要になります。
甲状腺機能低下症の犬では、ホルモン治療により適切にホルモンを補充できれば寿命に影響はないとされています。
しかし、うまく甲状腺機能低下症がコントロールできていないとさまざまな疾患を併発して健康寿命が短くなってしまいます。
飼い主さんは、しっかりと日々の投薬を行って、愛犬の甲状腺機能低下症をコントロールしてあげるようにしましょう。
甲状腺機能低下症の愛犬には手作りご飯をあげよう!
この記事では、甲状腺機能低下症の犬での手作り食のポイントや甲状腺機能低下症の病態について解説してきました。
手作り食を作る際には、以下の4つのポイントを抑えるようにしてあげましょう。
- 低脂質
- 低カロリー
- 消化しやすいタンパク質
- 低糖質
甲状腺機能低下症は、適切に治療すれば健康に過ごすことができる病気です。
飼い主さんは、食事のポイントに気をつけて、日々の投薬をしっかり行ってあげるようにしましょう。