介護のための環境
シニア犬のための住環境

愛犬がシニア期を迎えると、軽やかだった足取りがおぼつかなくなったり、ちょっとした段差でつまずいたりする姿が見られるようになりますよね。
今まで当たり前に過ごしてきたお家の中も、実はシニア犬にとっては危険がいっぱい潜んでいることもあるんです。
少しの工夫で、愛犬が安全で快適に過ごせるお家に変えてあげることができるので、一緒に見ていきましょう!
まず一番に見直したいのが、滑りやすいフローリングです。ツルツルした床は、足腰が弱くなったわんちゃんには踏ん張りが効かず、転倒して骨折やヘルニアといった大きな怪我につながってしまうことも。
そうなる前に、リビングなど愛犬がよく過ごす場所には、コルク製の滑り止めマットや、汚れた部分だけ洗えるタイルカーペットを敷いてあげるのがおすすめです。
お部屋の雰囲気を変えたくない場合は、ペット用の滑り止めワックスを塗るだけでも効果がありますよ。
次に気をつけたいのが、お家の中の段差です。今までひょいと飛び乗っていたソファや、玄関の上がり框。
そんな何気ない段差が、シニア犬にとっては大きな障害物になります。
無理に飛び乗ろうとして失敗し、怪我をしてしまう前に、緩やかな傾斜のスロープや、わんちゃんの足の長さに合ったペットステップを設置して、安全な動線を確保してあげましょう。
そもそも危ない場所には近づかせないように、ペットゲートを活用するのも賢い選択です。お家の中をバリアフリーにしてあげるイメージですね。
また、シニア犬は体温を調節する機能が衰えてくるので、室温管理もとても大切になります。
夏は涼しく、冬は暖かい環境を常に保ってあげてください。そして、一日のほとんどを寝て過ごすようになるため、寝床の環境も重要です。
同じ体勢で寝続けると、体重がかかる部分の血行が悪くなり、床ずれができてしまうことがあります。
床ずれはわんちゃんにとって非常につらいものなので、体圧をうまく分散してくれる高反発のベッドや介護用マットを用意して、床ずれのリスクを減らしてあげましょう。時々、寝返りをサポートしてあげるのも効果的ですよ。
愛犬介護の食事問題
食べやすいサポート

シニア期に入り、今までのようにごはんをがつがつと食べなくなったなと感じることはありませんか。
それは単なる食欲不振ではなく、筋力の低下や飲み込む力の衰えが原因かもしれません。愛犬の食事の様子をよく観察して、少しでも食べやすいように工夫してあげましょう。
まず見直してあげたいのが、食器の高さです。足腰の筋力が衰えてくると、うつむいて食べる姿勢が首や体に大きな負担となります。
そんな時は、わんちゃんの体の高さに合わせた食事台を用意したり、食器を手で持って食べさせてあげたりすると、楽な姿勢で食事ができるようになります。
食器に角度がついているタイプも、頭を深く下げずに済むのでおすすめですよ。楽な姿勢で食べることは、食べ物が誤って気管に入ってしまう誤嚥を防ぐことにもつながります。
フードの硬さや形が、愛犬にとって食べにくいものになっている可能性もあります。噛む力や飲み込む力、いわゆる嚥下能力が弱くなっているサインかもしれません。
ドライフードを食べているなら、40度くらいのぬるま湯で10分ほどふやかして、柔らかくしてあげましょう。指で簡単につぶせるくらいが目安です。
それでも食べにくそうであれば、ウェットフードやペースト状の流動食に切り替えるのも良い方法です。
シニア用の栄養バランスが考えられたフードもたくさんあるので、かかりつけの獣医さんに相談してみるのもいいですね。
もし自力で食べることが難しくなってきたら、食事介助をしてあげましょう。焦らず、わんちゃんのペースに合わせて一口ずつ与えることが大切です。
手から直接あげたり、スプーンを使ったりするのも一つの手です。より介助が必要な場合は、シリンジを使う方法もあります。
シリンジを使う際は、喉の奥に直接流し込むのではなく、口の横、頬の内側あたりにゆっくりと注入してあげると、むせにくく上手に飲み込むことができますよ。
大切なのは、食事の時間が愛犬にとってつらいものではなく、穏やかで楽しい時間であり続けることです。
食べない愛犬へのアプローチ

愛犬がごはんを食べてくれない姿を見るのは、飼い主さんにとって本当につらいことですよね。
どうして食べてくれないんだろうと心配になるお気持ち、とてもよくわかります。ですが、自己判断で様子を見るのは禁物です。
シニア犬の食欲不振は、歯周病や口内炎といったお口のトラブルや、内臓の病気など、何らかの不調が原因で起きている可能性も考えられます。
まずはかかりつけの動物病院で獣医師さんに相談し、食べない原因を突き止めてあげることが何よりも大切です。
病気ではない、あるいは治療と並行して家庭でできる工夫としては、わんちゃんの衰えがちな嗅覚を刺激してあげる方法があります。
ドライフードであれば、人肌程度に少し温めてあげると香りが立って、ワンちゃんの食欲をそそることがありますよ。
いつものフードに、茹でたささみやお肉の茹で汁、犬用のミルクなど、香りの良いものを少しだけトッピングしてあげるのも効果的です。
大好きだったおやつの匂いを思い出して、食べる意欲が湧いてくるかもしれません。
また、静かで落ち着ける食事環境を整えてあげることも意識してみてください。騒がしい場所ではストレスを感じて、ますます食欲がなくなってしまうこともあります。
大切なのは、愛犬の心と体に寄り添い、栄養補給の方法を一緒に見つけてあげることです。食べないからと叱ったりせず、穏やかな気持ちでサポートしてあげましょう。
愛犬介護に伴う精神的な問題
飼い主のメンタル

愛犬の介護は、愛情が深いほど「私がしっかりしなければ」「完璧にお世話をしてあげたい」と、ついつい頑張りすぎてしまうものですよね。
けれど、そのひたむきな想いが、知らず知らずのうちにご自身の心を追い詰めてしまうことがあります。
思い通りにいかない介護に罪悪感を抱いたり、終わりの見えない状況に孤独を感じたりするのは、決してあなただけではありません。
それは介護うつや、燃え尽き症候群と呼ばれる、誰にでも起こりうることなのです。
大切なのは、飼い主さん自身が心と体の健康を保つことです。あなたが笑顔でいることが、愛犬にとって一番の安心につながります。
24時間つきっきりの完璧な介護を目指す必要はありません。時には少し手を抜いて、ご自身の休息時間を意識的に作ってみてください。
好きな音楽を聴いたり、ゆっくりお風呂に浸かったり、ほんの少しでも介護から離れてリフレッシュする時間が、明日への活力になります。
犬の介護は長期戦になることも少なくありません。抱え込まず、一人で悩まないでください。あなたの心身の健康こそが、愛犬との穏やかな時間を支える土台になるのですから。
頼れるサービスの存在
サービスの利用で抱え込まない介護

愛犬の介護は、決して一人で抱え込むものではありません。
辛い時、不安な時は、まずご家族や友人、そして身近な専門家であるかかりつけの動物病院の先生や動物看護師さんに、その気持ちを話してみてください。言葉にするだけで、心が少し軽くなるはずです。
それでも、日々の介護で身体的、精神的な負担が大きくなった時には、専門の介護サービスを頼るという選択肢があることをぜひ知っておいてください。
例えば、飼い主さんがお留守の間、自宅に来てくれて食事や排泄のお世話をしてくれるペットシッターや訪問介護といった在宅サービスがあります。
わんちゃんが住み慣れたお家で安心して過ごせるのが大きな魅力ですね。
また、専門のスタッフが24時間体制でケアをしてくれる老犬ホームのような施設もあります。
日中だけ預かってもらえるデイサービスや、短期のショートステイなど、利用の仕方は様々です。外部のサービスを利用することに罪悪感を覚える必要は全くありません。
むしろ、専門的な知識を持ったプロの手を借りることは、愛犬の生活の質を高めるための前向きな選択肢の一つです。
愛犬にとって何が一番幸せかを考え、チームで介護をしてあげるような気持ちでいてくださいね。
どんなサービスがあるのか、まずはかかりつけの動物病院に相談してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
シニア犬の介護に向けて、シニア犬をもっと知ってみませんか↓