「誰もいない場所を見て吠える」「ご飯の好みが激しい」など、愛犬の不思議な行動に首をかしげたことはありませんか?
実はその理由の多くは、人間とは全く異なる犬の五感の仕組みに隠されています。彼らは優れた嗅覚で時間を感知し、人間とは違う色覚で世界を見ています。
この記事では、犬の五感(嗅覚・聴覚・視覚・味覚・触覚)の特徴を人間と比較しながら徹底解説します!
愛犬が見ている世界を正しく理解することで、ストレスサインにいち早く気づき、毎日の食事や暮らしをより快適にしてあげるヒントがきっと見つかりますよ。
嗅覚
人間との比較

わんちゃんの能力ですごいことと言えば、やっぱり一番に思い浮かぶのが嗅覚ですよね。
私たち人間とは比べ物にならないくらい鼻が利く、というのはなんとなく知っている方も多いと思いますが、具体的にどれくらいすごいのか、その秘密を詳しく見ていきましょう!
まず、匂いを感じ取るセンサーである嗅細胞の数からして全然違うんです。人間が約500万個なのに対し、わんちゃんはなんと2億個以上も持っているんです。
このたくさんのセンサーのおかげで、人間には全くわからないようなかすかな匂いもキャッチできちゃうんです。
よく「犬の嗅覚は人間の1億倍」なんて耳にしませんか?でもこれ、強烈な匂いを「1億倍強く感じてウッとなる」という意味ではないので安心してくださいね。
正しくは「刺激臭を感じる感度が強い」つまり「1億倍薄めた匂いでも感知できる」という意味なんです!
たとえば、プールいっぱいの水に、たった一滴の液体を垂らしただけでも、その匂いに気づけるくらいの精度だと言われています。本当に驚きの能力ですよね。
さらにすごいのが、わんちゃんの鼻の構造です。実は、呼吸のために吸う空気と、匂いを嗅ぐための空気をうまく分けて取り込んでいるんです。
だから走りながらハアハアしていても、しっかり匂いの情報をキャッチし続けられるんですね。
それに、左右の鼻の穴を別々に動かして匂いを取り込むステレオ嗅覚という機能も持っています。
左右別々に匂いを嗅ぐことで、匂いがどっちから漂ってくるのかという方向や発生源まで正確に特定できちゃうんです。
また、鼻の奥には「ヤコブソン器官」という秘密の器官まであって、ここではフェロモンなどの特殊な情報を感じ取っているそうです。
私たち人間が目で見て情報を得るように、わんちゃんはこの優れた嗅覚を使って、常に周りの世界から情報収集をしているんですね。
わんちゃんにとって嗅覚は、まさに生きるためのメインツールと言えるでしょう!
時間と感情の探知

わんちゃんの鼻が利くのは皆さんご存知の通りですが、実は匂いを通じて時間や心まで感じ取っていることをご存知でしょうか。
たとえば、仕事や外出から帰ってきたとき、なぜか愛犬が玄関で待ち構えていたという経験はありませんか。
足音や車の音がする前から待っている、まるで時計を見ているかのような正確さに驚かされますよね。
実はこれ、玄関に残った飼い主さんの匂いの濃さが、時間の経過とともに薄れていく変化を敏感に感じ取ることで、「匂いがこれくらい薄くなったから、そろそろあの大好きな人が帰ってくる時間だ」と判断していると言われているんです。
わんちゃんにとって匂いの変化は、私たちにとっての時計の針のような役割を果たしているのかもしれません。
さらに驚くべきことに、わんちゃんは私たち人間の感情の変化まで鼻で感じ取っています。
私たちが緊張したり、恐怖を感じたり、あるいは喜んだりするとき、体の中ではホルモンバランスが微妙に変化し、汗や分泌物の匂いが変わります。
わんちゃんはこの微量な化学物質の変化を嗅ぎ分け、飼い主さんがいまどんな気持ちでいるのか、その感情を読み取ることができるのです。
悲しいときにそっと寄り添ってくれるのは、ただ雰囲気を察しているだけでなく、私たちの体から発せられるストレスホルモンなどの匂いの変化にいち早く気づき、「大丈夫?」と心配してくれているからなのかもしれません。
この能力はさらに応用され、がん探知犬や糖尿病アラート犬のように、人間の呼気や体臭のわずかな変化から病気のサインを見つけるわんちゃんも活躍しています。
愛犬が私たちのことをじっと見つめたり、クンクンと匂いを嗅いだりしてくる時、それは言葉以上に深い愛情と関心を持って、私たちの体調や心の声に耳を傾けてくれている証拠なんですね!
聴覚
人間との比較

嗅覚に続いて、わんちゃんの聴覚もまた、私たち人間とは比べ物にならないほど優れた能力を持っています。
たとえば、犬笛という道具をご存知でしょうか。人間にはスカスカと息が漏れる音しか聞こえませんが、わんちゃんにはしっかり音が届いて反応しますよね。
これは、人間には聞こえない高い周波数の音、つまり超音波を聞き取る能力があるからです。
わんちゃんが音を感じ取れる範囲である可聴域は人間よりも広く、特に高い音を聞くのが得意です。
これは野生時代、草むらに隠れたネズミなどの小動物が発する微細な音や鳴き声を聞き取るために進化した名残だと言われています。
また、柴犬のような立ち耳のわんちゃんを見るとわかりやすいですが、彼らは耳を左右別々にピクピクと動かして、まるでレーダーのように音の方向を探ることができます。
その聴力は、人間が聞こえる距離の約4倍も遠くの音まで届くそうです。でも、この聞こえすぎる能力は、現代社会で暮らすわんちゃんにとって時に悩みの種になります。
私たちにとっては日常的な掃除機の音や花火の音も、わんちゃんにとっては突然襲いかかる不快な騒音かもしれません。
音を怖がって震えているときは、単に臆病なわけではなく、耳が良すぎるがゆえに強烈な不快感やストレスを感じている可能性があるのです。
愛犬が音に怯えているときは、大げさだと思わずに、その敏感な耳を理解して優しく守ってあげてくださいね。
言葉の聞き取り

「お散歩行く?」や「ごはん」という言葉を聞いた途端、目を輝かせて尻尾を振る姿を見ると、わんちゃんは人間の言葉を完全に理解しているんじゃないかと思えてきますよね。
実際、わんちゃんは私たちの言葉を本当によく聞いています。
ただ、彼らが受け取っている情報のメインは、言葉の意味そのものというよりも、飼い主さんの声の高さや抑揚、スピードといった声のトーンなんです!
たとえば、高い声で明るく話しかけられると「褒められている」「楽しいことがある」とポジティブに受け取り、逆に低く太い声だと「怒られている」「注意されている」と判断します。
わんちゃんとのコミュニケーションにおいて、何を言うか以上にどう言うかが大切なのはこのためなんですね。
もちろん、日々の暮らしの中で「おやつ」や自分の名前といった重要なキーワードは、音の響きと嬉しい出来事をセットで記憶しています。
だからこそ、テレビの音や雑音の中でも、自分に関係のある単語だけを瞬時にピックアップして反応できるんです。
時々、話しかけると小首をかしげる愛らしい仕草を見せることがありますよね。
あれは「ん?どういう意味?」と考えているだけでなく、耳の角度を変えて音をより鮮明に拾おうとしたり、大好きな飼い主さんの気持ちを一生懸命に理解しようとしている理解力と集中力の表れでもあります。
そんな姿を見たら、ぜひ優しいトーンでたくさん話しかけてあげてください。わんちゃんは、その音から溢れる愛情をしっかりと感じ取ってくれるはずです!
視覚
人間との比較

わんちゃんの見ている世界について、昔は「白黒テレビのようなモノクロの世界」だと言われていましたが、最近の研究でそれは大きな誤解だったことがわかってきました。
実はわんちゃんも、ちゃんと色を感じているんです。ただ、私たち人間が「赤・緑・青」の3原色で世界を見ているのに対し、わんちゃんの「色覚」は「青・黄色」の2色が中心になっています。
そのため、赤や緑といった色はグレーや褐色っぽくくすんで見えてしまい、人間ほど鮮やかに色の識別をするのが苦手だと言われています。
たとえば、緑色の芝生の上にある真っ赤なボール。私たちにはコントラストがはっきりして一目瞭然でも、わんちゃんにとっては背景の草の色と同化して見つけにくい色なんです。
もし愛犬のおもちゃを選ぶなら、彼らの目にも鮮やかに映る青や黄色を選んであげると、もっとスムーズにボール遊びを楽しめるかもしれません!
また、静止しているものを見る視力に関しては、人間で言うと0.3程度と意外に低く、景色全体が少しぼんやりと見えているようです。
その代わり、見える範囲である視野がとても広く、犬種によっては250度から290度も見渡せると言われています。
顔を動かさなくても背後の気配を感じ取れるのは、この広い視野のおかげなんですね。
そしてもう一つ意外なのが、近くのものにピントを合わせるのが苦手だということ。一般的に70cm以内はぼやけて見えるそうです。
口元にポロっと落ちたおやつをすぐに見つけられなくて「どこ?どこ?」とキョロキョロしてしまうのは、決してドジなのではなく、近すぎて逆に見えていないからなんです。
動体視力と暗視能力

前の章で、視力自体はあまり良くないと書きましたが、それでもボール遊びやフリスビーを見事にキャッチできるのはなぜでしょうか。
それは、わんちゃんがずば抜けた動体視力を持っているからなんです。静止しているものはぼんやりとしか見えなくても、動いているものに対しては驚くほど敏感に反応します。
これは遠くを走る獲物を追う狩猟本能の名残で、高速で移動するボールの軌道や、遠くにいる飼い主さんのわずかなハンドサインも瞬時に捉えることができるんですよ。
そしてもう一つ、わんちゃんの視覚ですごいのが、暗い場所でも目が見える夜目の良さです。
夜中に部屋の電気が消えていて、人間なら足元の家具にぶつかってしまうような暗闇の中でも、わんちゃんはスタスタと迷わずトイレに行けますよね。
これは網膜の裏側に「タペタム」という特殊な反射板を持っているからなんです。タペタムは、わずかな光を鏡のように反射させて増幅させる機能があります。
暗闇で写真を撮ったりライトを当てたりすると、わんちゃんの目がキラッと光って見えることがありますが、あれはこのタペタムが光を反射しているからなんですよ。
この機能のおかげで、私たち人間が真っ暗闇だと感じる場所でも、わんちゃんには夕暮れ時くらいの明るさに見えていると言われています!
ただ、光を増幅する感度が良すぎる分、急に強い光を当てられると人間以上に眩しく感じてしまいます。
夜のお散歩でライトを使う時は、直接目に当てないように気をつけてあげたいですね。
味覚
人間との比較

愛犬がご飯をガツガツと夢中で食べている姿を見ると、「今のフード、そんなに美味しいのかな?」と嬉しくなることがありますよね。
でも実は、わんちゃんが感じている味の世界は、私たち人間とは少し違っています。
舌にある味を感じるためのセンサーを味蕾と呼ぶのですが、人間の舌にはこの味蕾が約1万個あるのに対し、わんちゃんにはその5分の1程度、約2000個ほどしかありません。
そのため、人間が楽しむような繊細な味付けや複雑な料理の味わいは、わんちゃんにはあまり伝わっていない可能性が高いのです。
特に感じにくいとされているのが塩味です。もともと野生の肉食動物だったわんちゃんは、獲物のお肉や血液に含まれる塩分だけで生きていけたため、わざわざ舌で塩味を感じ取る必要がなかったからだと言われています。
その代わり、生存に欠かせない水の味を感じる特別なセンサーを持っているのは、動物として生き抜くためのすごい能力ですよね。
また、甘みや肉の旨味成分であるアミノ酸にはとても敏感に反応します。わんちゃんにとっての食事の楽しみは、舌で感じる味そのものよりも、鼻で感じる風味が大部分を占めています。
私たち栄養管理士が、食欲のない子にご飯を少し温めることをおすすめするのは、温めることで匂いを立たせ、「これは美味しいものだよ!」と鼻に伝えてあげるためなんです!
もし愛犬がご飯を食べない時、それは味が嫌いなのではなく、単に鼻が詰まっていたり、匂いが弱くて食べ物だと認識していないだけかもしれません。
人間目線の高級な味よりも、わんちゃんにとっては魅力的な匂いこそが、何よりのご馳走なんですね。
ワンちゃんにとっての『美味しい』

わんちゃんにとっての「美味しい」とは一体どんなものなのでしょうか。人間のように複雑な味付けを楽しむわけではありませんが、彼らなりの好みははっきりしています。
まず、本能的にエネルギー源となるお肉や脂肪の「旨味」、そして果物やサツマイモなどの優しい「甘味」をとても好みます。
その一方で、酸っぱいものや苦いものは「腐っているかもしれない」「毒があるかもしれない」という危険信号として認識し、本能的に避ける傾向があります。
レモンや苦いお薬を嫌がるのは、自分の身を守ろうとする正常な反応なんですね。そして、味の好みと同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのが食事の温度です。
前の章でお話しした通り、わんちゃんの食欲は匂いに大きく左右されます。
もし、冷蔵庫から出したばかりの冷たいご飯をあげていて食いつきが悪いなら、ぜひ人肌程度の38度前後に温めるひと手間を加えてみてください。
温めることでフードの香りがふわっと立ち上がり、わんちゃんの食欲スイッチを強力に刺激してくれますよ!
また、口当たりも重要なポイントです。カリカリとしたドライフードが好きな子もいれば、水分を含んだ柔らかいウェットフードを好む子もいます。
年齢や性格によって食感の好き嫌いも変わってくるものです。愛犬が何をご馳走だと感じるのか、色々な温度やタイプを試しながら、その子にとってのベストな「美味しい」を見つけてあげてくださいね!
触覚
人間との比較

ふわふわの毛に覆われているわんちゃんの体ですが、その触覚は私たちが想像している以上に繊細にできています。
実は、毛の根元一つひとつには神経が張り巡らされていて、直接皮膚に何かが触れなくても、毛に触れたわずかな空気の動きや振動を感じ取ることができるんです。
だからこそ、わんちゃんは優しく撫でられる心地よさを全身で感じることができるんですね。この触覚をうまく活かしたスキンシップは、愛犬との絆を深めるためにとても大切です。
たとえば、自分では舐めにくい背中や首周りは、撫でてあげるとリラックスしてくれることが多い場所です。
反対に、足先や尻尾の先端などは神経が集中していてとても敏感なため、触られるのを嫌がる子も少なくありません。
いきなり敏感な場所を触らず、気持ちいい場所からゆっくり触れ合ってあげてくださいね。そして、私たちが一番気をつけなければならないのが、わんちゃんの痛みに対する反応です。
人間と同じように痛みを感じる痛覚を持っていますが、彼らには野生時代の名残で、敵に弱みを見せないよう痛みを隠そうとする習性があります。
「キャン」と鳴かないから大丈夫だと思っていたら、実はじっと我慢していただけだった、なんてこともあり得ます。
愛犬の小さな異変にいち早く気づいてあげられるのは、一番近くにいる飼い主さんだけなので、日頃から全身を優しく触ってチェックしてあげてください。
ヒゲの役割

わんちゃんの口元に生えているピンとしたおヒゲ、とってもチャーミングですよね。でもこのおヒゲ、ただの飾りだと思っていませんか。
実はこれ、「洞毛」と呼ばれる立派な感覚器官で、根元には神経や血液がたっぷり通っている、超高性能なセンサーなんです。
たとえば、暗い場所や狭い隙間を通ろうとする時、わんちゃんはこのヒゲをアンテナのように広げています。
ヒゲが壁や物に触れることで、「ここは頭が通れる幅かな?」と瞬時に判断して、ぶつからずに歩くための空間把握をしているんですよ。
さらに、顔の近くで何かが動いた時のわずかな空気の流れさえも敏感に感じ取り、危険を察知してパッと反射的に目を閉じ、大事な眼球を守るという役割も果たしています。
プードルなどのトリミングが必要な犬種を除いて、基本的におヒゲは切らずに残しておく方が安心です。
特に、年齢を重ねて目が悪くなってきたシニア犬にとっては、ヒゲの重要度がぐっと増します。
視力が衰えたわんちゃんにとって、ヒゲは目が見えない分を補うための杖のような存在になるからです。
ヒゲからの情報がなくなると、周りの状況が掴めなくなって不安を感じたり、平衡感覚が鈍って物にぶつかりやすくなったりしてしまうこともあります。
愛犬の可愛いおヒゲには、安全に暮らすための大切な機能がたくさん詰まっているんですね!
いかがでしたでしょうか?ワンちゃんの五感について知ると、愛犬の感じている世界を少し理解できる気がしますよね!
愛犬の快適な生活のために、私たち人間が気をつけたい習慣などもまとめていますので、こちらの記事からチェックしてみてください↓