狂犬病予防接種はトイプードルを飼う上で知っておかなければならない事項の1つです。
本記事では、狂犬病予防接種について、狂犬病の概要から予防接種の時期に至るまで知っておきたい情報をまとめています。
トイプードルの狂犬病予防接種のポイント
まずは、狂犬病予防接種に関して覚えておきたい重要なポイントを確認しておきましょう。
- 狂犬病予防接種毎年1回の接種は、法律上の義務
- 子犬が生後90日を迎えたら30日以内に接種。市区町村への登録も必要
- 狂犬病が発症した場合の死亡率はほぼ100%。ワンちゃんだけでなく人間にも感染するので海外旅行に行く場合は要注意
トイプードルの狂犬病予防接種は年1回が義務!
狂犬病は致死率100%とも言われるとても恐ろしい病気です。発症後の治療法も現在有効な手立てが確立されていません。
そして混合ワクチンの対象となるジステンバーなど、他の病気と大きく異なる点は、人間にも感染する人畜共通感染症(ズーノーシス)であるという点です。
1950年以前、日本では人間も狂犬病に感染し死亡する程に広まっていたため、狂犬病予防法が制定され、以降、全ての犬に対し毎年一回の予防接種が義務付けられています。
子犬を迎えたら最初に接種する混合ワクチンと違って任意の予防接種ではなく、頻度も法律により決まっています。半世紀以上前に出来た規制であるため賛否両論はありますが、毎年接種をしておきましょう。違反した場合には20万円以下の罰金の対象にもなってしまいます。
トイプードルが罹る可能性のある狂犬病の概要
狂犬病はワンちゃんだけでなく、人間にも影響のある恐ろしい病気です。
予防接種の説明に入る前に、まずはその歴史や概要をみていきましょう。
狂犬病によるヒトの被害状況
日本では狂犬病は身近には感じられませんが、世界では現在でも死亡者が出ている恐ろしい病気です。
2004年のWHO(世界保健機関)によると、発症後にワクチンを接種した人の数は推計1,500万人、死亡者数は推計5,000万人にも及びます。
発生地域は、厚生労働省によると一部の地域を除いて全世界に広く分布しています。
日本は「狂犬病清浄地域」として指定されています。
厚生労働省のHPでは日本での発生状況も公表されています。
1953年 |
1954年 |
1955年 |
1956年 |
1970年 |
2006年 |
|
死亡者数 |
3人 |
1人 |
0人 |
1人 |
1人 |
2人 |
犬の発生数 |
176頭 |
98頭 |
23頭 |
6頭 |
発生なし |
発生なし |
犬の発生数でみると、1956年以降は狂犬病予防法の効果により発症していないことが分かります。
一方、1970年と2006年に死亡者が発生しています。これはどちらも日本人が海外旅行(ネパール、フィリピン)に行った時に発症した事例です。
本記事の内容とは直接関係はありませんが、海外旅行に行った場合には注意しましょう。
狂犬病の歴史
狂犬病の歴史は古く、「目には目を、歯には歯を」で有名な、紀元前1700年代に制定されたハンムラビ法典に記載があったとされています。
日本では、明確な記載はないものの、717年の「養老律令」や984年の「医心方」にその存在を示唆している記述がある様ですが、当時は人口も犬の数も多くはなかったはずなので、大規模な流行はなかったと推測されているそうです。
本格的な流行は「犬将軍」で有名な江戸幕府第5代将軍徳川綱吉が発した「生類憐れみの令」により犬の数が多くなったことが背景にある様です。
犬の管理が厳しくなり、人々が犬に関わるのを避ける様になって野良犬が増えたため、後の第8代将軍徳川吉宗の時代に大流行があったとの記録が残っているそうです。
その時代以降でも断続的に狂犬病の発生が続くことになりますが、1885年にパスツールによってワクチンが開発されたことによって風向きが変わります。
1922年に家畜伝染病予防法が制定され一時は流行を押さえ込んだものの、再び戦後に流行してしまい、1950年に狂犬病予防法を制定し再び取り締まる等、その後何度かの変遷を経ながらも、1956年の発症を最後に国内での発症は確認されていません。
狂犬病の症状
狂犬病の潜伏機関は噛まれた部位によって左右されます。
噛まれた部位からウイルスが1日数ミリから数十ミリの速度で移動し、脳神経に到達することで発症するためです。噛まれた部位が顔など、脳に近いときは、短い場合には2週間程度で発症することもあるそうです。
症状は、初期症状は発熱や食欲不振等、風邪に似た症状があり、噛まれた部位のかゆみがみられます。
その後症状が進行すると、興奮、精神錯乱、不安、幻覚等の神経症状を引き起こす様になります。
麻痺もみられ犬の場合は歩行不能になります。最後は昏睡状態となって死を迎えることとなります。
狂犬病の治療法
現在、発症後に有効な治療法は確立されておらず、死亡率が極めて高い病気です。
感染後、つまり噛まれた後から発症までの間であればワクチンを接種することにより、発症を防ぐことが期待出来るため、海外で犬に噛まれた場合にはすぐにワクチンの接種が必要です。
なお、本記事では専門外ですが、噛まれた場合には水で洗い消毒を行うなどの対応が命運を分けることになるので、狂犬病の発生地域に旅行に行く方などは、厚生労働省のQ&Aを確認する等、よく調べておきましょう。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/07.html
トイプードルの狂犬病と予防接種の時期
狂犬病について概要をみてきました。ここから、本題のワンちゃんの予防接種の詳細についてみていきましょう。
初回の接種は、生後91日以降、30日間のうちに接種を受ける必要があります。その後は毎年1回接種しましょう。
なお、4月1日から6月30日は狂犬病予防注射月間とされ、この時期になると市町村から集合注射の通知が郵送されます。
集合注射とは?トイプードルの予防接種を受ける場所
狂犬病予防接種は通常のワクチン接種と異なり、動物病院だけでなく、各自治体が行う集合注射により接種することができます。
先ほどの狂犬病予防注射月間に郵送で通知されるのは集合注射の方ですが、動物病院でも集合注射でもどちらで接種しても問題ありません。
動物病院で接種する場合には、病院で渡された注射済証を市区町村窓口に持参し「注射済票」の交付を受ける必要がありますが、副作用が気がかりな方は動物病院で接種した方が良いかもしれません。
トイプードルの予防接種では副作用に注意を
混合ワクチンと同様、狂犬病予防接種も副作用を起こす場合があります。
狂犬病予防接種は「不活化ワクチン」という副作用が起こりにくいタイプのワクチンです。
不活化ワクチンは化学処理により死んだ細菌やウィルスを使用したワクチンなので、生きた細菌やウィルスを用いる「生ワクチン」よりリスクが低いということです。
ただし、全く心配がないというわけではないので、以下の点に気をつけておきましょう。
- 接種後は20〜30分程度は病院内で待機し、様子を見ておく
- 午前中に接種し、その後も1日様子を見ておく
- 接種当日はワンちゃんの体調が万全な状態で望む
なお副作用に対する考え方については、混合ワクチンの記事の中で説明していますので、まだ読んでいない方は是非読んでみてください。
トイプードルに必要な混合ワクチンとは?接種時期や回数から副作用まで一気に解説!
トイプードルの狂犬病予防接種の費用
集合注射の場合は、注射料と注射済票交付手数料を合わせて3,000円台後半のところが多い様です。
動物病院の場合は病院によって異なるため、集合注射とそんなに違いはないと思いますが、気になる方は事前に確認しておきましょう。
トイプードルの狂犬病予防接種を受けたら
狂犬病予防法では、予防接種だけでなく役所への登録が義務づけられています。子犬を飼い始めて90日が経過したら、その日から30日以内にお住まいの自治体に登録申請をしましょう。登録をすると「鑑札」が交付されます。
自治体によっては、予防接種の注射済票を取得してからでなければ登録できないところもある様なので、詳しい手続きを各自治体のホームページ等で調べておきましょう。
トイプードルを飼い始めたら必ず予防接種を受けよう
いかがでしたか?狂犬病予防接種について理解が進みましたか?最後に冒頭に説明した重要ポイントをもう一度記載します。
- 狂犬病予防接種毎年1回の接種は、法律上の義務
- 子犬が生後90日を迎えたら30日以内に接種。市区町村への登録も必要
- 狂犬病が発症した場合の死亡率はほぼ100%。ワンちゃんだけでなく人間にも感染するので海外旅行に行く場合は要注意
- 本日は是非ともこちらを覚えてもらえればと思います。