愛犬との暮らしは、国や文化によって驚くほど異なります。
日本ではトイプードルなどの小型犬が人気ですが、欧米では大型犬が主流であり、電車やカフェにリードのまま同伴できる国も少なくありません。
しかし、その自由でドッグフレンドリーな環境の裏には、徹底されたしつけや厳しい法規制、アニマルウェルフェアへの高い意識が存在します。
この記事では、人気犬種や住宅事情の違いから、去勢・避妊に対する考え方、社会的なルールまで、日本と海外のペット事情を多角的に比較します。
世界基準のわんことの共生を知ることで、愛犬との生活をより豊かにするヒントが見つかるかもしれません。
犬種の傾向
飼われている犬の平均的な大きさ

愛するわんことの暮らしは、国が変わればどんな風に違ってくるのでしょうか?
今日は、日本と海外で飼われているわんちゃんの犬種の傾向やその理由に注目して、色々な違いを深掘りしてみましょう!
まず、日本で一番多く飼われているのは、どんなわんちゃんかご存知ですか?
環境省のデータなどを見ると、日本国内の飼育頭数のなんと約6割を、チワワやトイプードル、ミニチュアダックスフンドといった小型犬が占めています。
体重でいうと、だいたい10kg未満のわんちゃんが圧倒的な人気なんです。これは、小さなワンちゃんのかわいらしさはもちろん、日本の独特な住環境が大きく影響しています。
特に都市部では、集合住宅に住んでいる方が多く、広さに限りがあるため、必然的に小さなわんちゃんが選ばれやすいんですね。
それに対して、欧米、特にアメリカやドイツといった国々では、その傾向ががらりと変わります。
人気犬種のトップクラスには、体重20kgを超えるラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバー、ジャーマン・シェパードのような大型犬がランクインしてくるんです。
なぜこんなにも違いが出るのでしょうか?その背景には、わんちゃんの運動ニーズに対する考え方と、広い庭や空間が確保しやすい海外の住環境があります。
海外では、わんちゃんを家族の一員として迎え、その子が持っている本来の運動ニーズを満たしてあげることに高い意識が向けられています。
大型犬を飼うにはそれだけの空間の許容度が必要ですが、それが比較的叶いやすいのが海外の暮らしの特徴なんです。
日本の小さな住まいに暮らす私たちにとって、海外のわんちゃん事情は少し驚きかもしれません。続いて、なぜ海外では大型犬が多いのか、その理由をさらに掘り下げていきますよ!
人気の犬種の違い

日本では、JKC(ジャパンケネルクラブ)の登録データを見ると、トイ・プードルやチワワ、ミニチュア・ダックスフンドといった小型犬が長年トップを独占していますよね。
でも、海を渡ったアメリカでは、まったく違うランキングになることをご存知でしょうか。
アメリカの公的機関であるAKC(アメリカン・ケネル・クラブ)が発表する人気犬種ランキングを見てみると、その違いに驚かされます。
アメリカで長年根強い人気を誇っているのは、フレンドリーで賢いラブラドール・レトリバーです。
ほかにも、警察犬としても活躍するジャーマン・シェパードや、ゴールデン・レトリバーといった大型犬が常に上位にランクインしています。
欧米で人気の高いこれらの犬種には、ある共通点があります。それは、もともと人の仕事を手伝う使役犬としてのルーツを持っているということです。
たとえばレトリバー種は狩猟で獲物を回収する役割を、シェパード種は牧畜を守る役割を担ってきました。
人と協力して働くことが好きなブリードだからこそ、トレーニングもしやすく、家庭犬としても素晴らしいパートナーになってくれるのです。
一方で、最近では海外で日本犬の人気が急上昇しているのも面白い傾向です。特に柴犬などは、その独立心の強さや忠実さがクールだと評価されています。
私たちが海外の犬種に憧れるように、海外の方もまた、日本独自の犬種に新鮮な魅力を感じているのかもしれません。
なぜ海外は大型犬が多いのか

日本では室内で一緒に過ごしやすい小型犬が人気ですが、海外ではなぜ大型犬があんなに多いのでしょうか。
その一番の理由は、やっぱり住環境の違いが大きいと考えられます。欧米、特に郊外のエリアでは、一軒家に広い庭がついているのが一般的です。
大型犬が思いっきり走り回れるスペースが家の敷地内にあるというのは、迎える側にとっても大きな安心材料になりますよね。
でも、理由は広さだけではないんです。そこには、わんちゃんとどう過ごすかというライフスタイルの違いも深く関係しています。
海外では、犬は一緒に運動を楽しむパートナーという考え方がとても強いんです。週末には愛犬と一緒にハイキングに行ったり、毎朝のジョギングに連れて行ったりと、とにかくアクティブ。
日本の散歩文化というと、近所をゆっくり歩くスタイルが多いですが、海外ではもっとダイナミックに体を動かすことが日常の一部になっています。
だからこそ、体力があってタフな大型犬が好まれるんですね。また、犬に対する役割の意識も少し違います。
単にかわいがるだけの愛玩動物としてだけでなく、家族を守ってくれる守護者や、もともとの使役犬としての能力を尊重する文化が根付いています。
しっかりとしつけをして、良き相棒として信頼関係を築く。そんな関係性を求めているからこそ、存在感があり頼りがいのある大型犬が選ばれているのかもしれません。
飼い方の違い
去勢・避妊手術の普及率と義務化の有無

日本でわんちゃんを迎えるとき、去勢や避妊の手術をするかどうか、家族でじっくり話し合って決めることが多いですよね。
「健康な体にメスを入れるのはかわいそう」と悩む気持ち、とてもよくわかります。でも、海外のペット先進国に目を向けると、この手術に対する考え方が日本とは少し異なっていることに気づかされます。
欧米、特にアメリカやドイツなどでは、去勢・避妊手術を行うことは、飼い主が果たすべき重要な倫理的責任として広く認識されています。
これは、アニマルウェルフェア(動物福祉)の精神が根付いていて、望まれない命を増やさないこと、そして悲しい安楽死を減らすことが社会全体の目標になっているからです。
日本では手術の判断は飼い主に委ねられていますが、海外では保護施設やブリーダーからわんちゃんを迎える際、すでに手術が終わっていることが譲渡の必須条件になっているケースが多いんです。
さらに厳しい地域では、飼育頭数の適正管理や公衆衛生を守るために、手術を法律で義務化している自治体さえあります。
手術が済んでいることを証明するタグやライセンスを首輪につけているわんちゃんも多く、それが「責任ある飼い主の証」として社会に受け入れられているんです。
野良の動物を増やさないためのTNR活動も含め、海外では手術が個人の選択という枠を超えて、動物たちと人が幸せに共生するための社会的なシステムとして定着していると言えるでしょう!
ブリーダー・保護施設からの譲渡に対する意識

日本では、ショッピングモールなどのペットショップでかわいい子犬と出会うのが一般的ですよね。
でも、海外の多くの国では、その光景が当たり前ではないことをご存知でしょうか。実は欧米を中心に、動物愛護の観点からペットショップでの生体販売規制が急速に進んでいます。
「犬や猫は商品ではない」という考えが強く、店頭での販売が禁止されている地域も少なくありません。
そのため、これからわんちゃんを迎えたいと考える人の多くは、信頼できる専門のブリーダーか、地域のシェルターと呼ばれる保護施設を訪れるのが主流なんです。
海外では、保護施設からわんちゃんを引き取ることは「命を救う」という誇り高い選択として、とてもポジティブに受け入れられています。
有名な俳優さんやセレブリティがレスキュー団体から保護犬を迎え、その様子をSNSで発信することも多く、しっかりとした譲渡文化が根付いているんですね。
「かわいそうだから」ではなく「この子を幸せにしたい」という前向きな気持ちが、そこには溢れています。
ただ、シェルターから引き取るには、驚くほど厳格な審査をパスしなければなりません。住環境や留守番の時間、収入証明、過去の飼育経験など、事細かにチェックされます。
時には「あなたのライフスタイルではこの犬種は幸せにできない」と断られることもあるほど。
それは、一度辛い思いをしたわんちゃんに、二度と悲しい思いをさせないための愛ある厳しさです。安易に飼うことを許さない社会の姿勢が、わんちゃんたちの命を守っているのですね。
番犬としてのペットの需要

日本では、最近あまり「番犬」という言葉を聞かなくなったかもしれません。
玄関先に猛犬注意のステッカーを見かけることも減ったように感じます。これは日本が比較的治安の良い国であり、ホームセキュリティシステムが普及したことも理由のひとつかもしれません。
けれど、海外に目を向けると、愛犬に家の警備や家族の安全を託す文化は今も色濃く残っています。
特に欧米の一部地域では、自分たちの身は自分たちで守るという防犯意識が非常に高く、広い敷地や家屋を守るためのセキュリティとして、犬を飼うことが合理的な選択とされています。
そのため、ドーベルマンやロットワイラーといった、勇敢で身体能力の高い犬種がガードドッグとして選ばれることが多いのです。
彼らは単に強そうだから選ばれているのではなく、飼い主の指示を忠実に守る高い訓練性能を持っているからこそ、パートナーとして信頼されているんですね。
外出事情
交通機関

日本でわんちゃんと電車やバスに乗る時って、全身が隠れるキャリーバッグやカートに入れないといけないですよね。
小型犬ならまだしも、中型犬以上になると重くて移動だけでヘトヘト…なんて経験、みなさんもあるのではないでしょうか。
でも、ヨーロッパなどの海外に目を向けると、その常識が覆されます。多くのヨーロッパ諸国では、なんと公共交通機関にノーゲージで乗ることができるんです。
例えば、フランスの高速鉄道TGVやドイツの地下鉄などでは、セント・バーナードのような超大型犬が、飼い主さんの足元で大人しく寝ている光景をごく普通に見かけます。
もちろん、誰でも無条件で乗れるわけではありません。
周囲への配慮として口輪の装着と適切なリード管理が義務付けられており、人間と同じようにペット用乗車券を購入するシステムが一般的です。
また、タクシーやライドシェアサービスでも、事前に申請したり敷物を準備したりすれば同乗可となるケースが多く、愛犬との行動範囲が日本とは比べものにならないほど広いのが特徴です。
ただ、この自由な環境は「犬は吠えずに足元で待つもの」という徹底したしつけとマナーがあってこそ成り立っているシステムですね。
飲食店・商業施設

日本で愛犬とランチやお茶を楽しもうとすると、どうしても「テラス席のみOK」というお店が多くなってしまいますよね。
お天気の良い日は最高ですが、雨の日や真夏・真冬は少し辛いのが現状です。ところが、これもヨーロッパを中心とした海外の街では、その常識が少し違います。
欧米のドッグフレンドリーな国々では、カフェやレストランへの店内同伴がごく当たり前のように許可されています。
おしゃれなビストロで、飼い主さんが食事を楽しんでいる足元に、大きなわんちゃんが静かに伏せている光景は日常茶飯事。
お店のスタッフさんも「いらっしゃい!」と笑顔でわんちゃん用のお水を持ってきてくれるなど、社会全体がとても温かく受け入れてくれるんです。
食事の場だけではありません。デパートや一部のスーパーマーケットといった商業施設でも、キャリーバッグや専用カートを利用して入店できるケースが多くあります。
生活必需品の買い物にも一緒に連れて行けるので、お留守番をさせる時間が減るのも嬉しいポイントですよね!
もちろん、こうした自由が認められている背景には、徹底したマナー遵守の精神があります。
食品衛生法の観点から食品に直接触れさせないのはもちろんですが、何よりわんちゃん自身が「カフェではテーブルの下で静かに待つもの」と理解していることが重要です。
周りのお客さんに迷惑をかけない高度なしつけが定着しているからこそ、店内同伴という素敵な文化が成り立っているのですね。
ドッグフレンドリーな街づくり

海外旅行中に公園を散歩していると、街全体がわんちゃんを歓迎しているようなドッグフレンドリーな雰囲気に感動することがあります。
その理由のひとつが、わんちゃんと飼い主さんが快適に過ごすために整備された公共インフラの充実ぶりです。
例えば、公園の水飲み場。人間用の蛇口の下に、わんちゃんが飲みやすい高さの専用ボウルが備え付けられた水飲み場を見かけることは珍しくありません。
これなら重たい水筒を持ち歩かなくても、身軽にジョギングや散歩を楽しめますよね。また、日本との違いを大きく感じるのがフン処理のシステムです。
日本の公園では「フンは持ち帰る」のがマナーですが、欧米の多くの公園には、処理用の袋が入ったディスペンサーと、それを捨てるための専用ゴミ箱がセットで設置されています。
「汚いものは隠す」のではなく「その場で衛生的に処理できる環境を整える」という合理的な考え方が、街の清潔さを保つことにもつながっているんです。
都市部であっても、ノーリードで思いっきり走れる広大なドッグランが整備されているのも魅力です!
こうした環境が整っていることは、飼い主さんが無理なくマナーを守れるプラスの循環を生み出し、犬の快適さがそのまま人の快適さにつながる素敵な社会を作っているのですね。
法的な位置づけ

日本では、悲しいことに法律上ペットはまだ「モノ」として扱われる側面が残っていますが、海外ではこの考え方が大きく変わり始めています。
特にヨーロッパの国々では、動物を単なる所有物ではなく、「センティエント・ビーイング(感覚を持つ存在)」として法律で明確に定義する動きが進んでいるんです。
これはつまり、わんちゃんたちも人間と同じように痛みや喜びを感じる生き物として、その尊厳を守られるべきだという考え方が社会の根底にあるんですね。
そのため、動物愛護法も私たちの想像以上に厳格です。もしも飼育放棄や虐待を行った場合、日本とは比較にならないほど重い罰則が科せられます。
国によっては、実刑判決として懲役刑になったり、数百万円規模の高額な罰金を支払わなければならなかったりと、社会的に非常に厳しい制裁が待っています。
「たかがペット」という甘い考えは、そこでは通用しないのです。また、わんちゃんを飼うためのライセンス制度や登録義務も徹底されており、行政による監視の目も行き届いています。
少し厳しいように感じるかもしれませんが、こうしたしっかりとした法制度と責任があるからこそ、わんちゃんが社会の一員として認められ、どこへでも一緒に行ける自由な暮らしが成り立っているのです。
糞尿処理のマナー

日本でも、お散歩中のフンを持ち帰るのは飼い主さんの大切なマナーですよね。
でも、海外ではこれがマナーという枠を超えて、法律や条例で定められた厳しい義務になっていることがほとんどなんです。
多くの国では、公共の場での糞尿処理が徹底的に義務化されていて、もし違反してフンを放置してしまった場合、日本円で数万円から時にはそれ以上の高額な罰金が科されることも珍しくありません。
地域によっては、お散歩中に警察官やレンジャーが「ちゃんとフン袋を携帯していますか?」と抜き打ちチェックを行うことがあり、持っていないだけで罰則の対象になることもあるというから驚きですよね。
さらに進んでいるのが、アメリカの一部のマンションや地域で導入されている「DNA登録」というシステムです。
これは、あらかじめわんちゃんのDNA情報を登録しておき、もし敷地内にフンが放置されていたら、そのフンを検査してDNAを照合し、飼い主さんを特定してしまうというもの。
特定された飼い主さんには、検査費用と罰金が請求される仕組みになっています。
一見すると厳しすぎるルールに感じるかもしれませんが、こうして公衆衛生が徹底的に守られているからこそ、街全体が清潔に保たれ、犬を連れて行ける場所が増えているのも事実です。
厳しいルールは、わんちゃんたちが社会の一員として認められ、みんなに愛され続けるための大切な基盤になっているのかもしれません。
しつけ(訓練)の徹底

日本でわんちゃんのしつけというと、どうしても「お手」や「お座り」といった芸を教えるイメージが強いかもしれません。
でも、海外におけるしつけは、人間社会で共生するための必須科目、いわば教育そのものなんです。
欧米では、わんちゃんを迎えるとすぐにパピー・スクールや社会化クラスに通わせるのが一般的です。
これは、子犬のうちから他の犬や人間、そして街の騒音などに慣れさせる社会化を何よりも重要視しているから。
成犬になっても、呼び戻しや伏せといった高度な服従訓練が完璧に入っていないと、一人前の犬として認められない風潮さえあります。
もし公共の場で他人に飛びついたり、吠え続けたりして問題行動を起こせば、それはすべて行動管理を怠った飼い主の責任とみなされます。
場合によっては行政からの厳しい指導やペナルティが科されることも。アメリカのCGC(Canine Good Citizen)プログラムのように、優良な家庭犬であることを認定するテストも普及しています。
これまでの記事でご紹介した、電車にそのまま乗れたり、レストランで一緒に食事ができたりする自由な暮らし。
それは、決して放任されているわけではなく、こうした徹底したしつけと飼い主さんの高い意識という土台があって初めて実現していることなんですね。
いかがでしたか?
今回は、日本と海外のペット事情の違いについて、さまざまな角度からお話ししてきました。 海外の事情を知ることで、日本の良いところも、これから取り入れていきたい素敵な文化も見えてきたのではないでしょうか。
この記事が、愛犬との暮らしをより豊かにするヒントになれば嬉しいです。