「愛犬と飛行機で旅行したい!」と考えたとき、最初に直面するのが日本の貨物室輸送という現実です。
本記事では、愛犬が手荷物として扱われる日本の空旅の現状から、飼い主さんが最も気になる貨物室の環境、そして愛犬にかかる精神的・身体的リスクについて解説します。
さらに、IATA基準のケージ選びや事前のクレートトレーニング、当日の体調管理まで、安全な輸送のために必須となる準備を徹底ガイド!
楽しい旅行にするために、まずは正しい知識とリスクを理解し、愛犬を守るための万全な対策を確認しておきましょう。
日本の犬の空旅の現状

愛犬との旅行は飼い主さんにとって夢のような時間ですよね。
でも、いざ飛行機を使って遠出しようと調べてみると、日本国内の移動では大きな壁があることに気づかされます。
日本では現状、原則として動物の客室持ち込み不可となっているんです。
とても残念なことですが、家族同然の大切なわんちゃんも、日本の空の旅のルール上は「手荷物」と同じ扱いである受託手荷物としてカウンターで預けなければなりません。
つまり、フライト中は飼い主さんと離れて、貨物室で輸送されることになるのです。これが今の日本におけるスタンダードな運用なんですよね。
もちろん、航空会社側も空調管理など最大限の配慮を行っていますが、やはり人間が過ごす客室とは環境が異なります。
離着陸時のエンジン音や気圧の変化、そして何より大好きな飼い主さんと離れ離れになる不安。
暗い場所での時間は、わんちゃんにとって相当な負担になることは想像に難くありません。
輸送中の温度管理や騒音、そして精神的なストレス軽減対策について、多くの飼い主さんが深い懸念を抱いているのは当然のことです。
実際、SNSや愛犬家の間でも、この輸送方法については「家族を貨物扱いするなんて」という反対意見や、安全性を危惧する声など、さまざまな議論が交わされています。
最近ではスターフライヤーのように、一部の条件付きで機内同伴を認める画期的なサービスも出てきましたが、全体から見ればまだまだ例外的です。
むしろ、過去の事故やトラブルを受けて、大手の航空会社規定や安全対策は年々厳格化している傾向にあります。
使用するペットクレートの強度基準や当日の健康状態のチェックも厳しくなっているので、安易に「ただ連れて行けばいい」と考えるのは禁物です。
かけがえのない愛犬を守るためにも、まずはこの厳しい現実とリスクを正しく認識することが、空の旅への第一歩となります。
貨物室輸送の仕組み

多くの飼い主さんが一番不安に感じるのが、愛犬を預ける場所についてではないでしょうか。
貨物室と聞くと、なんとなく暗くて寒くて空気が薄い、過酷な倉庫のような場所をイメージしてしまいますよね。
でも安心してください。実際にわんちゃんたちが乗る搭載エリアは、私たちが座っている客室と同じように気圧を調整する与圧が行われており、空調によってある程度の温度管理もなされています。
スーツケースなどが積まれる場所とは区別され、空調が効く特別なスペースで輸送される仕組みになっているんです。
ただし、いくら空調があるといっても、駐機中の外気の影響はどうしても受けてしまいます。
そのため、特に夏場の暑い時期などは、フレンチブルドッグのような短頭種は熱中症のリスクが高まるため、安全を考慮して搭乗拒否されてしまう期間が決まっています。
せっかくの旅行なのに当日になって連れて行けないなんてことにならないよう、航空会社のホームページで対象犬種や期間をしっかりチェックしておきましょう!
手続きは、通常の荷物とは違い、事前の申告が絶対に欠かせません。飛行機の種類によっては搭載できるスペースに限りがあるため、人間だけでなくわんちゃんの分も必ず事前予約が必要です。
当日はカウンターで、大切なわんちゃんを預けるための同意書を記入し、そこからは生きた手荷物として航空会社の責任下で機体へ運ばれます。
到着後はターンテーブルではなく、係員さんの手によって直接引き渡されます。
離れている間はどうしても心配になりますが、正しい知識を持って準備をすることで、愛犬への負担を最小限に抑えてあげたいですね。
預け入れの手続き

いざ愛犬と一緒に飛行機に乗ろうと決めたら、まず直面するのが重要書類の準備です。人間の搭乗手続きよりも少し複雑で、不安に感じることがあるかもしれません。
多くの航空会社では、当日にチェックインカウンターで輸送同意書の提出が求められます。
この書類には、輸送中に起きた体調不良や万が一の事態に対して航空会社は責任を負わないという免責事項が含まれています。
大切な家族を預ける飼い主さんにとっては、サインをするのに少し勇気がいる書類ですが、リスクを承知した上で輸送を委託するという法的な意思表示になりますので、内容をしっかり確認して署名しましょう。
また、渡航先や航空会社によっては、事前に獣医師が発行した健康証明書の提示が必要になるケースもあるので、早めの情報収集が欠かせません。
特に注意していただきたいのが、季節や機材による輸送制限です。貨物室は空調が効いているとはいえ、外気温の影響をゼロにはできません。
そのため、日本の航空会社の多くは、気温が高くなる5月から10月下旬頃までの期間、暑さに弱いフレンチ・ブルドッグなどの短頭種の預かりを中止しています。
知らずに空港へ行って搭乗できないという悲しい事態を防ぐためにも、予約の段階で愛犬が搭乗可能な期間か、乗る予定の機材に空調設備が整っているかを必ず確認しましょう。
当日はカウンターでケージを含めた総重量に加え、わんちゃんの体高・体長などを計測されることがあります。
このサイズや重さによってペット料金が決まる仕組みになっており、私たちが預けるスーツケースなどの超過手荷物料金とは別の料金体系が設定されています。
スムーズに出発するためにも、余裕を持って空港に向かい、愛犬に声をかけながら落ち着いて手続きを進めてあげてくださいね。
ケージ・容器の規定

いつものお出かけで使っている布製のキャリーバッグやリュック、軽くて便利ですよね。
でも、飛行機に乗るときは、普段使い慣れているものでもそのまま使うことはできないんです。
航空会社は何よりもわんちゃんの安全を最優先に考えているため、IATA基準と呼ばれる国際航空運送協会が定めた厳しいルールを満たしたクレートを用意する必要があります。
これは、飛行中の揺れや万が一の衝撃から大切な小さな命を守るための、世界共通の安全基準になっています。
具体的には、プラスチックや金属で作られた頑丈なハードタイプであることが絶対条件です。
布製や木製のケージは、強度が足りなかったり、不安になったわんちゃんが内側から噛み壊してしまったりする恐れがあるため、基本的に認められていません。
また、扉はしっかりと頑丈なロックがかかり、内側からは絶対に開けられない構造になっていて、脱走防止対策が万全であることも重要です。
さらに、輸送中に呼吸が苦しくならないよう三方向に通気孔があることや、外からお水をあげられる水飲み容器を扉に取り付けられることも必須のポイントになります。
そして何より慎重になっていただきたいのがサイズ選びです。
クレートの中でわんちゃんが自然に立って頭が天井につかず、くるっと方向転換ができ、リラックスして横になれる十分な広さが必要です。
もしサイズが小さすぎると判断されると、わんちゃんの体に負担がかかるだけでなく、安全上の理由で当日に搭乗を断られてしまうという悲しいケースも実際に起きています。
せっかくの旅行が台無しにならないよう、愛犬の体を事前にしっかり測って、余裕を持った適切なサイズを準備してあげてくださいね。
輸送時の愛犬への影響とリスク
精神的な影響

わんちゃんにとって、飛行機での移動は私たちが想像する以上に大きな試練となります。
普段と違う匂いや場所、そして何よりも大好きな飼い主さんと離れ離れになってしまう状況は、強い分離不安を引き起こす原因になりかねません。
特にわんちゃんは人間よりもはるかに耳が良いため、離着陸時の轟音や風切り音といった独特の音に対して聴覚過敏になりやすく、逃げ場のないクレートの中で強い騒音ストレスにさらされ続けることになります。
暗くて狭い場所で、いつ終わるかわからない大きな音に耐えなければならない時間は、精神的にとても負担がかかるものなのです。
こうした過度なストレスは、目的地に到着した後や家に帰ってからの様子に現れることが多いです。
例えば、いつもは食いしん坊なのにご飯をまったく食べなくなったり、逆に異常に興奮して落ち着きがなくなったりすることがあります。
中には、恐怖のあまり震えが止まらない、大量のよだれが出る、あるいは過呼吸のような状態になるといったSOSサインを見せる子もいますし、逆にぐったりと無気力になってしまうケースもあります。
目に見えない心のダメージは、こうした行動の変化として現れることを知っておいてください。
身体的なリスク

精神的なストレスも心配ですが、それ以上に慎重に考えなくてはならないのが身体への負担です。
上空を飛ぶ飛行機の環境は、地上とは全く異なります。
与圧されているとはいえ気圧の変化は避けられず、酸素濃度も少し低くなるため、わんちゃんの体質によっては低酸素症に近い状態を引き起こすリスクがあります。
特に注意が必要なのが、パグやフレンチブルドッグ、シーズーといった鼻が短い短頭種のわんちゃんたちです。
彼らはもともと鼻の構造上、呼吸がしづらく体温調節が苦手なため、気圧の変化や緊張による呼吸数の増加が重なると、重篤な呼吸困難や熱中症リスクが急激に高まってしまいます。
実際に過去に痛ましい事故が起きていることから、多くの航空会社で短頭種の輸送自体を断っていたり、夏場の受け入れを中止していたりするのです。
また、今は元気に見えても、心臓病やてんかんなどの持病がある場合や、高齢のわんちゃんにとっても空の旅は命がけになります。
慣れない環境での極度の緊張や気圧の変動が引き金となって、発作を起こしたり持病が悪化したりする可能性も否定できません。
貨物室では飼い主さんがすぐに異変に気づいてケアをしてあげることができないため、そのリスクは地上にいるときよりもはるかに高くなります。
だからこそ、旅行の計画を立てる段階で、必ずかかりつけの先生に相談してください。
航空会社によっては獣医師の診断書の提出を求められることもありますが、書類のためだけでなく、プロの視点で「この子の体力で飛行機に耐えられるか」を客観的に判断してもらうことが大切です。
もし先生から少しでも不安要素を指摘されたなら、愛犬の命を守るために、連れて行かないという選択をする勇気も、飼い主さんの深い愛情の一つかもしれません。
飼い主がすべき具体的な準備と対策
搭乗前の健康管理

いよいよ出発の日が近づいてきたら、飼い主さんがしてあげられる一番の準備は、愛犬を万全のコンディションに整えてあげることです。
まずは搭乗の数日前に、必ず動物病院で直前検診を受けましょう!
普段は元気いっぱいに見えても、隠れた不調がないか獣医師にしっかりと診てもらい、過酷な輸送環境に耐えられる健康状態かお墨付きをもらうことが大切です。
必要であれば健康証明書を発行してもらい、獣医療連携のもとで準備を進めれば、飼い主さんの安心感も大きく違いますよね。
次に、とても重要なごはんのタイミングについてお話しします。長い時間のフライトでお腹が空いたら可哀想と思って、直前にたっぷりあげたくなる親心、痛いほどよくわかります。
でも、飛行機の揺れや極度の緊張で気分が悪くなり、もしケージの中で戻してしまったら大変です。
吐瀉物が喉に詰まると窒息や肺炎を引き起こす嘔吐・誤嚥リスクがあり、命に関わる危険な状態になりかねません。
ここは愛犬の安全を守るためだと思って、心を鬼にして絶食時間を守りましょう。目安としては搭乗の4〜6時間前までに、消化の良いものを少量与えて食事を済ませておくのが理想です。
もちろん、脱水対策としてお水に関しては、給水ボトルなどを利用して出発まで適度に飲ませてあげてくださいね。
クレートに慣らしておく

いよいよ具体的な準備の中で、一番時間をかけて丁寧に行っていただきたいのがクレート慣らしです。
専門的にはクレートトレーニングとも呼ばれますが、これは単に箱に入る練習ではありません。
多くのわんちゃんにとって、普段入らない狭いクレートは「病院に連れて行かれる怖い乗り物」になりがちです。
でも、飛行機という非日常の空間で頼れるのはそのクレートだけ。
だからこそ、そこを「閉じ込められる場所」ではなく、誰にも邪魔されない自分だけの安心領域に変えてあげる準備が不可欠なんです。
このトレーニングは一朝一夕では身につきません。できれば出発の最低でも1ヶ月以上、余裕を持って数ヶ月前から始めてくださいね。
最初はリビングに扉を開けた状態で置いておき、中でおやつをあげたりたくさん褒めたりするポジティブ強化を行い、「ここに入ると嬉しいことがある!」と覚えてもらいましょう!
自ら喜んで入るようになったら、少しずつ扉を閉める時間を延ばしていき、飼い主さんの姿が見えなくても落ち着いて過ごせるよう練習します。
このステップを焦らず着実に踏むことが、当日の分離不安解消にも大きく役立ちます。また、仕上げとして大切なのがニオイ付けです。
普段から寝床として使い、愛用している毛布や大好きな飼い主さんの匂いがついたタオルを入れてあげてください。
慣れ親しんだ匂いに包まれることで、見知らぬ貨物室の中でも、愛犬はきっと「ここは自分の家だ」と安心して休むことができるはずです。
当日と到着後

いよいよ出発当日、緊張とワクワクが入り混じる朝ですね。
準備万端だと思っていても、空港の独特な雰囲気に飲まれてうっかり確認を忘れてしまわないよう、最後にもう一度、頭の中で当日のチェックリストを確認しながら動きましょう!
まず、チェックインカウンターに向かう前に、必ず屋外で十分なお散歩と排泄を済ませてあげてください。
慣れないケージの中で我慢を強いられるのはわんちゃんにとって相当なストレスですし、事前に排泄コントロールをしっかり行うことで、機内での汚れや衛生面での不安も解消できます。
そして、愛犬を預ける直前の最終確認です。ケージの中は安全のためシンプルにし、揺れで動いて怪我をしたり、誤飲事故につながったりするような小物は取り除いておきましょう。
ここで絶対に忘れてはいけないのが、緊急連絡先の明記です。
万が一のトラブルや、到着地での迷子防止のために、飼い主さんの名前とすぐに繋がる電話番号を書いた紙を、ケージの目立つ場所にしっかりと貼り付けてください。
航空会社のスタッフさんが貼ってくれる輸送ラベルや、生き物注意ステッカーが誰から見てもわかりやすい位置にあるかどうかも、ご自身の目でしっかり確認してから送り出してあげてくださいね。
長いフライトを終えて、到着地で愛犬と再会した瞬間は、安堵で胸がいっぱいになることでしょう。
でも、すぐに観光地へGO!というのは少し待ってあげてください。まずは到着時確認として、わんちゃんの様子に異変がないか、怪我や呼吸の状態をくまなくチェックします。
空の旅は乾燥しやすく、想像以上に脱水しやすい環境ですので、静かな場所でゆっくりと水分補給・休息を取らせてあげることが最優先です。
元気そうに見えても体は疲れ切っています。ホテルなどの落ち着ける場所で、いつもの笑顔が戻るまで十分に休ませてあげることが、飼い主さんができる一番の労いです。
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