入手しやすく、気軽に楽しむことができるりんご。
りんごは健康な犬なら適量を与えても問題ありません。尿路結石予防にも効果があると言われています。
しかし、愛犬に与える際にはいくつかの注意点があります。 りんごは「医者知らず」と呼ばれるほど栄養価が高い果物ですが、心臓や腎臓などに持病がある犬や、糖尿病の犬には特に注意が必要です。
どのような場合に食べさせても良いのか、またどんな点に気をつければよいのでしょうか。
この記事を読んで、飼い主が正しい知識を持って、りんごを与えられるようにしましょう。
愛犬がりんごを食べてもいい!でも皮や種に注意!
基本的に、りんごはワンちゃんが食べても大丈夫な果物です。
りんごの実
健康な犬に果実の部分を小さく切って、適量を与える分には問題ありません。
しかし、あげすぎると糖分の取りすぎになってしまい、糖尿病や肥満などの原因になる可能性があります。
皮
皮はポリフェノールなどの栄養が豊富に含まれていますが、消化しにくく、また農薬が付着している可能性もありますので、与える際には注意が必要です。
種
種には毒性のある物質が含まれているので、与えないよう気を付けましょう。
犬の大きさに対して適量の果実部分を与える程度でしたら、生でも加熱しても与えられる比較的安全性の高い果物の一つです。
愛犬にりんごを与えるメリットと含まれる栄養素
人間にとってもりんごは健康的な食材として人気ですが、犬にとっても健康的で栄養豊富な食材です。
りんごの栄養について紹介します。
リンゴ酸とクエン酸
りんごの甘酸っぱい味をつくるのがリンゴ酸とクエン酸という栄養素です。
リンゴ酸やクエン酸には疲労回復成分や炎症を沈める作用があると言われています。
また、犬の尿内にあるカルシウム成分と結合することで、尿結石のもとになるカルシウムを外へ排出する働きを持っていることもわかっています。
リンゴのみずみずしさや食感は、通常あたえるドッグフードとは大きくことなるため、食欲が落ちた時のトッピングとしても有用です。
ペクチン
水に溶かすことでゼラチン化する、水に溶けやすい食物繊維です。
食物繊維は腸内で善玉菌の餌となることで、腸内の環境を整える働きをします。
腸内細菌は消化や吸収などの栄養の摂取を助けるだけでなく、免疫力の向上など様々な効果があることがわかっています。
カリウム
カリウムは体内の水分量の調整や、塩分を体の外に排出する働きがあるミネラル成分です。
水分、塩分の調節はからだの健康状態を保つためには非常に重要で、血圧やいろいろな疾患に影響を及ぼします。
ただし、カリウムを過剰に摂取してしまうのは場合によっては危険であり、腎臓病や心臓病を持っている犬に与える場合には獣医師に相談しておきましょう。
ポリフェノール
ポリフェノールとは、ほとんどの植物に存在する苦味や色素となる成分で、りんごには100種類以上のポリフェノールが含まれています。(これらをまとめてリンゴポリフェノールと呼んでいます)
複数のポリフェノールが相互作用をもつことで抗酸化作用や血行改善・アレルギー抑制や高血圧の予防など様々な健康メリットがあると言われています。
このようにりんごは犬にとっても健康を維持するために重要な成分・栄養素が多く含まれているのです。
愛犬にりんごをあげる時の注意点
りんごは生のまま食べても大丈夫な果物ですが、一個丸々あげることや、大きいサイズのままあげることは、消化管の閉塞や下痢につながります。
小さくカットしてあげる
丸飲みしても大丈夫なくらい、小さいサイズにカットしてあげるようにしましょう。
いつものフードにまぜてあげてもよいでしょうし、おやつの一つとして、ヨーグルトなどの、犬が食べても大丈夫な食品と混ぜてあげてもよいでしょう。
また、加熱しても問題のない果物ですので、食欲のないときや、高齢の犬に与えるときにも、すりおろしたり加熱したりと様々なバリエーションで与えることができます。
整腸効果や、疲労回復、血圧を下げる効果や抗酸化作用が期待できると言われています。
整腸効果のあるペクチンは、腸内環境を整える働きをしてくれますし、クエン酸はエネルギー補給や疲労を回復する効果があります。
クエン酸
また、クエン酸には、シュウ酸カルシウムの尿路結石を予防してくれる効果があるとも言われています。
しかし、既にできてしまった結石を溶かすものではないので、尿路結石と診断されている場合は、獣医師の指示に従った食事・治療を行う必要があります。
カリウム
また、カリウムも豊富に含まれているので、体内の浸透圧や体液を調整することによって、腎臓の負担軽減や、血圧を下げる効果が期待できます。
ポリフェノール
りんごの皮の方に多く含まれているポリフェノールは、抗酸化作用に優れており、アレルギーの抑制が期待できるほか、歯周病の原因となる細菌の成長を抑制することが報告されています。
ただし、心臓や腎臓などに持病がある犬や、糖尿病の犬、服薬を続けている犬、療法食を与えている犬は、りんごに含まれている糖分やカリウムなどがかえって害になってしまう場合もあります。
かかりつけの動物病院の先生と相談の上、血液検査などで体のミネラル成分の状態を調べてから与えるようにしましょう。
愛犬にりんごをあげるなら交差反応アレルゲンに注意!
健康な犬がりんごを食べてもさして問題はありません。
子犬から老犬まで安心して与えることのできる、安全性の高い果物の一つです。
交差反応アレルゲンとは
交差反応アレルゲンとは、その物自体にアレルギーを持っていなくても、近い種のたんぱく質にアレルギー反応が出る場合、その種に近い他の動植物のたんぱく質にもアレルギー反応が出てしまうことを言います。
植物系では、ブタクサやカバノキにアレルギーがあると、りんごにも交差性を示すので、これらの植物にアレルギーがある犬には、りんごを与えてはいけません。
食物では、ニンジンにアレルギーのある犬はりんごを食べてはいけません。
このように、一見何ら関係のなさそうな間柄の物であっても、交差性のある物質にアレルギーがあると、つられて反応が出てしまうこともあるので、飼い主がしっかり気を配ることが重要です。
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りんごアレルギーを持っている場合は要注意
もともと様々な食材にアレルギー反応を示してしまう犬は注意が必要です。
りんご自体にアレルギーを持っている犬は、少量であっても与えてはいけません。
例え少量であったとしても、アレルギー症状が出てしまうからです。
症状の程度には、食べた量やその時の体調、アレルギー性疾患の重症度などの様々な要因がありますが、ショック症状から死亡する可能性もあるため、与えるのは避けましょう。
初めてりんごを食べる犬も要注意です。
アレルギー反応が出るかもしれない、ということを頭において、何があっても対処できるように、かかりつけの動物病院が開いている時間帯に少量だけ与えて、しばらく様子を見てから、本格的に与えるようにしましょう。
りんごは入手しやすく、与えやすい果物ですが、食べなくてはならないものではないので、心配な場合は無理に与えないようにしましょう。
また、りんご自体にアレルギーを持っていなくても、交差反応アレルゲンがある場合がありますので、そちらも気を付ける必要があります。
犬はりんごの種や皮を食べても大丈夫なのか
皮は与えてよい
りんごの皮は与えても大丈夫ですし、ポリフェノールなどは、実の部分よりも皮の方に多く含まれています。
ですが、皮は消化しにくい場合がありますので、細かくカットするか、すりおろすことをおすすめします。
また、りんごによっては、皮に農薬が付いていることもありますので、よく洗ってから与えるようにしましょう。
種や芯は与えてはいけない
種や芯の部分は与えてはいけません。
りんごの種や芯の部分には、青酸配糖体であるアミグダリンとよばれる毒性の物質が含まれており、咀嚼や体内の酵素による分解で、シアン化水素を発生させます。
多量に摂取してしまうと、呼吸困難や虚脱、痙攣などの症状が起こり、最悪の場合死亡するケースもありえるので、注意が必要です。
ただし、犬が中毒を起こし死亡してしまうシアン化水素の量(致死量)は、体重1kgあたり2gと言われています。
計算すると体重10kgの犬であれば、りんご100個分の種を食べた場合、中毒により死亡してしまいます。
つまり、種を1粒飲み込んでしまったからと言って、大きな影響がでない場合がほとんどですので、まずは落ち着いて対処しましょう。
りんごを与える際は、念のため種や芯の部分を取り除いて与えるようにしましょう。
食べてしまった場合は、すぐに動物病院へ
愛犬がりんごの種や芯を食べてしまった場合、残念ながら自宅でできることはありません。
りんごの種や芯を食べてしまった後、愛犬の様子がおかしい場合は直ちに病院へ連れて行ってあげましょう。
また、異常がない場合でも、愛犬の様子をよく観察し、様子を見てあげてください。
愛犬がりんごの種や芯を食べてしまった時の病院での対処方法
前に述べたように、りんごの種や芯を食べてしまった場合、それらから発生されるシアン化水素により、体調を崩す場合があります。
近くの動物病院もしくは動物救急病院に連絡をして、出来るだけ正確な摂取量と、犬の体重や体調を伝えられるように準備をしましょう。
前述したように、種を1粒飲み込んだだけでは、致死量に達しないと考えられますが、体調を崩す可能性は十分にあります。
その後の愛犬の様子や食欲、便の状態などには細心の注意を払いましょう。
対応は早ければ早いほど良いので、食べてしまった量が多い場合や、心配な場合は様子を見ずにすぐに連絡しましょう。
検査
シアン化水素による中毒症状が出ていないか確認するために、基本的な身体検査を始めとして、血圧や心電図、酸素飽和度などを測定することもあります。
血液検査では、各種臓器にダメージを与えていないか 体のミネラルバランスの異常は無いかなどのチェックをします。
呼吸が乱れている場合や、喉に詰まってるなどの可能性がある場合、大量に飲み込んでしまった場合などは、レントゲン検査にて肺や消化管の状況を調べます。
費用:上記の検査全て実施した場合で1-2万円程度 (参考価格)
胃洗浄
有毒な物質そのもの、もしくはそれらを発生させるものを誤食した場合、吐き出す際に通る食道や喉への刺激を考慮して、催吐処置は実施されません。
刺激性のある内容物を除去するには、胃洗浄を行う必要があります。
胃洗浄は、麻酔をかけて口から胃に管を挿入し、内容物を回収した後、複数回洗浄する治療法です。
麻酔をかける処置になるので、麻酔前検査や点滴の設置が必要であり、処置自体にも時間を要します。
費用:入院費用などを含めずに5-10万程度 (犬の体重などによっても大きく変わります)
点滴・薬剤処置
毒物が体に入ってしまった場合、点滴を行い血液中の毒素を薄める方法が最も簡便で一般的な方法として用いられます。
症状の程度に合わせて、皮膚の下に液体を溜める皮下点滴や、血管内に直接液体を補充する静脈点滴が行われます。
静脈点滴は、基本的には入院下での治療となりますが、こちらの方が皮下点滴より効率よく素早く毒素を薄めることができます。
費用:点滴と入院一泊あたり1-2万円程度
摘出措置
万が一、りんごの芯や細かくカットされていないりんご自体が喉や細い消化管に詰まってしまい、消化器閉塞を起こす可能性があります。
りんごに限らず、消化管閉塞を起こしている場合は、頻繁に嘔吐をします。
1日に5回以上の嘔吐を繰り返す場合は、獣医師に相談しましょう。
レントゲン検査などでりんごの芯などが閉塞を起こしていると判断された場合は、すぐに摘出処置を行います。
基本的にはお腹を開ける手術が行われますが、閉塞している場所や状態によっては内視鏡での摘出が可能になることもあります。
お腹を開ける手術の場合は術後の入院が1週間前後必要となります。
費用:手術、入院総額で20-30万円程度(犬の体重などによっても大きく変わります)
犬にりんごを与える時の心構え
安全性の高いりんごであっても、犬に与える際には注意が必要です。
果物には、果糖とよばれる糖類が多く含まれているため、人間が食べるのと同じように犬に与えてしまうと、糖質の過剰摂取になってしまうことがあります。
ドッグフードのトッピングや、おやつとして上手に取り入れ、適量を与えるようにしましょう。
また、りんごに限らず、ほかの食べ物でも、犬にとっては注意が必要な食べ物はたくさんあります。少しでも疑問があるようなら、調べてから与えるようにしたほうがよいでしょう。
他の果物を愛犬が食べても良いのか気になる方はこちらをご覧ください