犬の健康診断で「胆泥が溜まっています」や「胆泥症です」と獣医師から言われたことがある飼い主さんも多いのではないでしょうか。
今回は、犬の胆泥症について、原因、症状、治療法、そして特に気をつけるべき食事について詳しく解説します。キャベツやブロッコリー、りんごなどの良い食材と、避けるべき肉や米、さつまいも、ささみなどについてのアドバイスも紹介します。正しい食事療法で愛犬の健康を守りましょう。
犬の胆泥症の食事療法
低脂質なご飯
胆汁は脂肪の消化に関わっているため、負担を減らすためにも、脂質を抑えたご飯にしましょう。
また、脂質が少ないだけではなく、酸化した脂肪も避けた方が良いでしょう。
油は熱を加えたり、空気に触れたりすると酸化します。
最近の大手のご飯は酸化防止剤が含まれていることが多いですが、できるだけ袋を開けて時間が経ったものをあげるのは控えましょう。
良質なタンパク質
胆嚢に異常がある場合、肝臓もトラブルを起こしていることがあります。
その場合には、肝臓に負担をかける高タンパクのご飯は避けたほうが良いでしょう。
例えば、脂質が抑えられると人間ではダイエットなどでよく聞くささみは、とても高タンパクなため、胆嚢だけではなく腎臓や肝臓にも異常がある子にはおすすめしません。
犬の胆泥症に良い食材
りんご
りんごは品種にもよりますが、おおよそ8割が水分で、脂質は全体の1%にも満たず消化性が高いです。
そのため、胆泥が溜まっていると診断され、脂質を控える必要な子にぴったりのおやつです。
また、りんごの味や食感を好む子も多く、食欲が落ちている時にご飯にトッピングするのもおすすめです。
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ブロッコリー
ブロッコリーは脂質が低く、しっかりと茹でれば消化にも良い野菜です。
ビタミンも豊富に含まれており、ご飯のトッピングやおやつにはピッタリな食材です。
茎の部分もしっかりと火を通せば問題ないですが、喉に詰まらないように、また、消化が少しでも良くなるように刻んであげるようにしましょう。
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キャベツ
キャベツは抗酸化作用のあるビタミンCが豊富に含まれており、食物繊維も豊富に含まれています。
また、脂質が少ない上に好んで食べてくれる子が多いです。
より消化をよくするためにも、火を通してあげると良いでしょう。
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犬の胆泥症に良くない食材
脂身の多いお肉
何度も繰り返していますが、脂質は胆泥症で1番気をつけるべき栄養素です。
脂身の多いお肉は犬にとって大のご馳走ですが、消化に悪く下痢や腹痛を引き起こしやすいです。
さつまいも
さつまいもは食物繊維たっぷりで甘いため、犬も好む野菜の1つですが、非常に糖質が高い野菜でもあります。
糖質過多は胆泥症の原因疾患につながりやすいため、さつまいもを与える際は、しっかり茹でることと、与えすぎに注意しましょう。
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米
米、特に白米はさつまいもと同様に糖質が高いことが理由です。
また、犬はもともと穀物を消化するのが人と比べると苦手です。
魚や肉メインで、野菜で栄養を補填するのが理想の食事と言われています。
また、玄米などは人では健康食品として有名ですが、犬にとっては非常に消化に悪く、お腹を壊してしまうため控えましょう。
犬の胆泥症とは
犬の胆嚢は脂肪の消化に重要な胆汁を含む袋のような臓器です。
胆汁は正常な場合サラサラした液体ですが、様々な理由によって濃縮し泥状(胆泥)になることがあります。
超音波検査の際に黒っぽく映るはずの胆嚢が、胆泥が貯まるとその部分(一部、または全体)がグレーに映ります。
胆泥症は高齢犬で非常に多くみられる異常所見です。
犬の胆泥症の原因
犬種
ミニチュアシュナウザー、コッカースパニエル、シェットランドシープドッッグといった高脂血症の好発犬種で胆泥が多く見られます。
しかし、好発犬種だけではなく、年齢を重ねるとどの犬種でも良く見られるため、好発犬種ではないからといって安心はしないようにしましょう。
年齢
胆泥症は、病院へ来た高齢犬(7歳以上)では約50%の子でみられると言われるほど一般的な所見です。
また、胆嚢が破裂するぎりぎり、または破裂した後に症状が初めて現れることが多いため、高齢になるまで気づかれないことがほとんどです。
年に1度の健康診断を、そして超音波検査まで行うことをおすすめします。
基礎疾患
胆嚢に炎症が起こる胆嚢炎や、内分泌疾患がもともとあり、二次的に胆泥症が引き起こされることがあります。
内分泌疾患は、具体的な病名としては甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症などが挙げられます。
犬の胆泥症の症状
治療が必要かどうか難しい所見
胆泥が溜まっているからといって、直接何かの症状が出ることはありません。
胆泥が貯まることによってじわじわと胆汁の流れが悪くなり、胆泥によって胆汁の出口が詰まってしまい、最悪の場合は胆嚢が破裂してしまします。
しかし、ほとんどが特に症状を示さず偶然超音波検査で発見されるケースです。
症状が全く出ていない場合、どこまで様子をみて治療開始するのか、またどんな治療を行うのか飼い主と獣医師で話し合って決めますが、その判断は中々難しいです。
しかし以下の症状が見られた場合は、胆汁鬱滞、胆嚢破裂し、命に関わる可能性があるため、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
黄疸
黄疸とは、白目や歯茎などの体の粘膜が黄色く染まって見える状態です。
胆汁は、ビリルビンという黄色〜オレンジ色の色素を含んでいます。
体の中のビリルビンがうまく排泄できなくなると、体に蓄積し、その結果黄疸が見られるようになります。
ただし、胆嚢だけではなく、肝臓や赤血球の異常によっても引き起こされる場合もあるため、黄疸が出ているからといって必ず胆嚢に異常があるわけではありません。
食欲不振
胆泥が溜まり胆嚢の炎症(胆嚢炎)を併発したり、胆泥の影響で胆汁が消化管へ出て行く道が塞がれたりする(胆管閉塞)状態まで行くと、様々な症状が出ます。
そのうちの1つに食欲不振が挙げられます。
胆汁は脂肪の消化に重要なため、胆汁が正常に働かない場合に脂肪の消化がうまくいかず、食欲不振を引き起こします。
また、腹痛が引き起こされ、その影響で食欲がなくなります。
腹痛、嘔吐
胆泥関連で1番怖いのは、胆嚢破裂によって、消化液である胆汁がお腹の中に広がり、腹膜炎を引き起こす場合です。
とぐろを巻いているような姿勢で動かなくなったり、頻繁にのびをしたりする様子が見られた場合はお腹が痛い可能性があります。
もともと超音波検査で胆泥が見られると言われており、突然嘔吐を繰り返す時は要注意です。
必ずすぐに動物病院へ行き、超音波検査してもらいましょう。
胆嚢破裂し、痛みや吐きがひどい場合は、緊急の外科手術になる場合があります。
犬の胆泥症の治療法
治療薬
多くの病院でまず最初に行うよう勧められる治療方法が、内服薬による内科的治療です。
ウルソデオキシコール酸という胆汁分泌を増加させる利胆剤や、胆嚢出口の筋肉に作用し、胆汁排泄を促すトレピブトンなどがあります。
超音波検査やCT検査にて胆管の通過ができているかや、他の病気に対する薬を元々飲んでいないかも薬の選択には重要です。
例えばウルソデオキシコール酸を胆管が完全閉塞している子に使うのは禁忌です。
獣医師とよく話し合いながら、薬の種類と用量は決定しましょう。
摘出手術
胆嚢破裂を完全に防ぐ治療は、胆嚢を完全に取る外科手術です。
リスクもあるため、症状が出ていないのに手術を行うかは難しいところですが、選択肢の1つとしてあります。
筆者は、麻酔に耐えうる体力があり、胆泥が年々増えてきているのであれば取ることをおすすめします。
というのも胆嚢が破裂してしまった後の手術の場合、手術が成功しても、その後約50%の子は亡くなってしまうからです。
胆嚢は取ってしまっても問題ないのかという点がよく飼い主さんから質問を受けますが、多くの場合特に問題はありません。
ちなみに馬や鹿などもともと胆嚢がない動物もいます。
基礎疾患の改善
原因のトピックで述べたような基礎疾患がある場合は、そちらの治療を行うべきです。
内分泌疾患は年齢が高くなるにつれ、コントロールが難しくなりますが、内服薬や点滴、通院によるモニタリングでうまく付き合っていきましょう。
手作りご飯や食事に気をつけて愛犬の胆泥症を治療しよう!
胆泥症と診断されたとしても、ここから進行させなければ、また進行を遅らせることができれば、多くの症例で普段の生活に支障は出ません。
また、胆泥に対する治療は多くの選択肢があります。
獣医師のアドバイスと共に、愛犬の年齢、体調、薬が得意か、ご飯にこだわりがあるかなどの性格、費用などいろいろな要素を併せて選択をすることをおすすめします。