人間と同様に、犬も咳やくしゃみをします。
身体が冷えた時に、犬が数回くしゃみをすることは珍しくありません。
しかし、愛犬のくしゃみが止まらない時には、風邪でも引いたのではないかと心配になることもあるでしょう。
犬のくしゃみには様々な原因が考えられ、単なる生理現象として心配ない場合もあれば、病気を疑って獣医に連れて行かなければならないこともあります。
病気によっては、入院や手術が必要になるでしょう。犬のくしゃみの種類・原因・対策について解説します。
犬のくしゃみは生理現象!
犬のくしゃみは、外部からの刺激に対する生理現象という場合が少なくありません。
たとえば、空気中の埃や塵などの異物が鼻に入ったら、犬はくしゃみをして異物を排出しようとします。
また、犬は地面に鼻を近づけて嗅ぎまわるので、鼻に砂や植物の花粉・種といった異物が入ってくしゃみをしてしまうことも多いのです。
大抵の場合、数回のくしゃみで異物が排出されるので問題ありません。
何回もくしゃみを繰り返している時は、異物が鼻の中に残っていたり、アレルギー反応を起こしていたりすることもあるため、動物病院で獣医の診察を受けた方が良いでしょう。
愛犬と過ごす部屋は、埃が浮遊しないように換気や清掃を心がけ、空気清浄機を設置するなどの配慮が欠かせません。
それから、煙草や香水などが犬の嗅覚を刺激して、くしゃみを引き起こすこともあります。
愛犬の居る場所からは、鼻を刺激する物を遠ざけるようにしましょう。
犬のくしゃみで気をつけたい「逆くしゃみ」とは
「逆くしゃみ」は、急激に息を鼻腔から何回も吸い込みながら、「ブーブー」または「ズーズー」と鼻を鳴らす動作を指します。
通常のくしゃみは鼻から空気を出しますが、「逆くしゃみ」は、その逆で鼻から息を吸い込む際に音を出すのです。
「逆くしゃみ」は、チワワ・ブルドッグ・トイプードルなど小型犬の短頭種と言われる犬種に多く、鼻孔奥の緩んだ筋肉が鼻孔の狭窄を起こしている場合やアレルギーの影響を受けた場合に起こると言われています。
犬が「逆くしゃみ」を起こすと、突然喘息のように苦しみ出すため、慌てる飼い主が少なくありません。
しかし、実際には愛犬が呼吸できなくて苦しんでいるわけではなく、ほとんどの場合数分で治まります。
もっとも、「逆くしゃみ」が短時間で終わらず、愛犬が元気を失い食欲も低下したら、病気の可能性も否定できません。
スマホで「逆くしゃみ」の実態を撮っておき、動物病院で獣医に見てもらうと診断に役立ちます。
犬のくしゃみの回数が多すぎる時は病気かも!?
犬のくしゃみが止まらない場合、犬の風邪「ケンネルコフ」の可能性があります。
「ケンネルコフ」は、くしゃみのほか、乾いた咳・鼻水に加え、発熱や食欲不振といった人間の風邪に似た症状を伴います。
この風邪は、子犬に起こりやすく、犬から犬へウイルス感染するおそれがありますが、人間にはうつりません。
特に、鼻炎を併発している場合には、くしゃみが連続して止まらないという特徴が現れるでしょう。
風邪以外の原因として、鼻腔内で炎症を起こしていたり、口内や鼻腔に腫瘍ができていたりすることが原因として挙げられます。
これ以外にも、犬歯の歯茎が化膿する歯牙疾患やカビの感染による病気も、くしゃみの原因として考えられるでしょう。
犬のくしゃみで考えられる病気
犬がくしゃみをしてしまう原因にはいくつかの病気の可能性もあります。
くしゃみが起きやすい犬の病気を紹介します。
犬のくしゃみは鼻炎が原因
くしゃみを伴う病気として、まず、突発性鼻炎が疑われます。
犬の突発性鼻炎は、アレルギーや免疫異常などが原因とされ、生死を左右するような重大な病気ではありませんが、放置すると長引くことが少なくありません。
ウイルス性鼻炎も、くしゃみの原因となります。
ジステンパーやヘルペスなどのウイルスが、鼻炎を引き起こすのです。最も注意すべきはジステンパーウイルスで、重篤化しやすく命の危険にさらされることもあります。
ジステンパーウイルスによる鼻炎に罹患すると、くしゃみや咳のほか、下痢や痙攣なども現れるので、こうした症状に気付いたら速やかに獣医に相談しましょう。
ただし、大半のウイルス性鼻炎は、ワクチン接種をすれば予防できます。心配ならば、愛犬が健康なうちにワクチン接種を施しておきましょう。
また、鼻水に血が混じったり、片方の鼻の穴だけ鼻水が出たりする場合は、細菌性鼻炎や真菌性鼻炎を疑わなければなりません。
どちらも放置すると慢性蓄膿症に進んでしまい、呼吸困難や顔面の変形といった症状を引き起こすこともあります。
これらの鼻炎は、決して見逃すことなく獣医の診察を受け、抗生剤や抗真菌薬を投与して治療しなければなりません。
鼻腔内腫瘍もくしゃみを伴う
くしゃみに加えて、鼻水が悪臭を放ったり、血が混ざる場合には、細菌性鼻炎や真菌性鼻炎だけでなく、鼻腔内腫瘍も疑われます。
特に、いびきや鼻からの出血がひどく、呼吸が苦しそうな時は、鼻腔内腫瘍の可能性を考えて、早めの受診が必要です。
犬の鼻腔内に腫瘍ができたら、その大半は悪性と考えなければなりません。
鼻腔内腫瘍ができやすい犬種は、シェットランドやシープドックといった長頭種です。特に、中高年の犬に多い病だと言えるでしょう。
歯周病によるくしゃみ
鼻腔に近い上顎犬歯に歯石や歯垢が付着して、犬が歯周病に罹患することがあります。
歯石や歯垢には、歯周病の原因となる細菌が大量に含まれているからです。
酷いケースでは、鼻と口をつなぐ骨が溶けて穴が空いてしまい、くしゃみが止まらなくなることもあります。
歯周病にかかったら、抗生剤や抗炎症剤による治療が必要ですが、症状が進行してしまった場合は抜歯しなければなりません。
犬も歯周病にかかることを忘れずに、飼い主は歯ブラシで愛犬の歯磨きをしてあげましょう。
時には爪楊枝などを使って歯石や歯垢を取り除いてあげることも必要です。
また、犬歯が折れたり擦り減ったりすると、細菌が侵入して病気の原因となります。
幼犬や老犬には硬いドッグフードをそのまま与えず、柔らかくふやかすなど工夫しなければなりません。
歯が弱い愛犬ならば、動物病院で定期的に歯の検診を受けることが大切です。
犬のくしゃみの原因を考えて対処しよう
犬は鼻が敏感な分、鼻の病気にかかると人間より日常生活に大きな悪影響があります。
愛犬がくしゃみをしたら、それは鼻に重大な障害が生じているサインかもしれません。
犬にとって大切な嗅覚を失わないように、くしゃみのほかに症状がないかチェックしましょう。
また、くしゃみは鼻だけでなく歯の病気が原因というケースもあります。
くしゃみが続いたり、他の症状を伴う場合には、単なる風邪だろうと勝手な判断をせず、愛犬を動物病院に連れて行って獣医の診察を受けさせましょう。