愛犬が後ろ足で耳を盛んに掻いているのを見かけたら、耳が痒いというサインを示していることが多いでしょう。
中には、耳が赤く腫れあがるほど掻きむしるケースも見られます。
こうした場合は、疾病を疑うことが必要です。
犬の痒みの原因は、気にしなくて良いものから深刻な病気まで多岐にわたります。
重大な病気の可能性がある症状については、その特徴について飼い主が知っておかなければなりません。
犬の耳が痒いときの病気の可能性や対策について解説しましょう。
犬が耳を痒がる理由
長く犬を飼っていると、愛犬が耳を痒がる姿を目にすることがあるでしょう。
単に、耳に蠅がとまっただけで痒くなることもあり、たまに耳を掻く程度であれば何の問題もありません。
しかし、耳は犬の体の中でも特に皮膚が薄く脆弱な部分で、蚤やダニなどが取り付いて痒がることが多いため注意が必要です。
犬の耳の痒みの原因はそれだけではありません。
ストレスによって、耳が痒くなることもあるでしょう。
痒みの理由は、犬種や環境によって様々なのです。
犬の耳は、人間と同様に、外耳・中耳・内耳の3つの器官に分かれており、それそれの部位に起きる炎症や疾病などが原因となって痒みを生じることもあります。
犬が耳を痒がる原因と対策1. 耳垢が溜まっている
耳垢は、耳から鼓膜までの耳道で分泌される老廃物のことです。
複雑な構造を持つ犬の耳は耳垢が溜まりやすく、耳垢が原因で痒みを生じることがあります。
飼い主が犬の耳の中を覗いて耳垢を見つけたら、人間用のウェットティッシュや犬用の耳掃除シートを使って拭い取りましょう。
脱脂綿を指先に巻き付けて犬の耳の中を拭うと、大抵の耳垢を除去できます。
その際に、あまり力を入れてはいけません。
犬の耳の中の粘膜を傷つけるおそれがあるからです。
粘着質の耳垢が溜まりやすい垂れ耳などの犬種に関して、こうしたケアで取り除けない耳垢には、イヤークリーナーが効果的です。
犬の耳の中にイヤークリーナーを数滴垂らし、耳の根元をつまんで揉んであげると、犬は耳の中に違和感をおぼえ、顔を振って耳の中のイヤークリーナーを外へ弾き飛ばします。
ただし、イヤークリーナー以外の液体を犬の耳の中に入れることは禁物です。
耳を消毒しようとして、エタノールやエッセンシャルオイルを使おうとする飼い主がいますが、おすすめできません。
こうした液体を耳の中に入れると、耳の皮膚から成分が吸収されて、愛犬が中毒になることがあるからです。
また、耳かきや綿棒など人間が耳掃除に使うアイテムの使用を避けましょう。
こうした道具を使うと、犬が不用意に動いて鼓膜を破るリスクを負うことになります。
もし、耳垢の量が異常に多く、かつ耳が臭う場合は、外耳炎などの病気を疑わなければなりません。
犬が耳を痒がる原因と対策2. 耳の病気にかかっている
犬は人間と同様に、外耳炎・中耳炎・内耳炎といった病気にかかります。
特に、垂れ耳の犬は、耳の中の通気性が悪く、細菌の繁殖が容易で罹患しやすいでしょう。
外耳炎
外耳で耳垢ができるため、外耳には外耳炎をはじめとする耳のトラブルが多く発生します。
外耳炎といっても、様々な種類があり、原因もいくつか挙げられます。
マラセチア性外耳炎
まず、マラセチア性外耳炎は、黒や茶色の粘着質の耳垢が特徴的な外耳炎で、マラセチアという犬の皮膚に常在する酵母が原因です。
この酵母が異常繁殖すると、変色した耳垢が発生し、悪臭や痒みを生じるのです。
細菌性外耳炎
また、細菌性外耳炎という犬の皮膚で繁殖する細菌が原因の外耳炎もあります。
外耳は耳の中で最も耳の穴に近いことから、点耳薬が効果的です。
アレルギー性外耳炎
犬のアレルギー性外耳炎も多く、耳のほかにも下痢といった症状が現れるため、耳の洗浄に加え内服薬などの薬物療法が必要になるでしょう。
食物アレルギーの可能性がある場合は、ドッグフードの選定について再検討しなければなりません。
中耳炎
外耳炎を発症すると、中耳炎も併発することが少なくありません。
中耳炎になると、鼓膜にもダメージを被ることが多いので、早急に治療しましょう。
中耳炎も、炎症を抑える薬物療法が効果的ですが、重症の場合は鼓室を切開し洗浄する外科的処置が必要になることもあります。
内耳炎
外耳炎が進行すると、内耳炎を発症することがあり、聴覚と平衡感覚を司る内耳が炎症を起こすことによって感覚障害やめまい・吐き気などの症状に至るリスクを避けられません。
内耳は重要な神経に囲まれており、内耳炎になると顔面神経麻痺といった神経症状に悩まされることもあります。
耳の奥にある内耳には点耳薬が効かないので、ステロイド・非ステロイド抗炎症薬等や抗生剤を内服させます。
犬が耳を痒がる原因と対策3. 寄生虫や遺物が入っている
犬が耳を痒がる原因として、ダニなどの寄生虫や空中浮遊物が挙げられます。
耳ヒゼンダニ
犬の耳に付きやすいダニとして、耳ヒゼンダニが代表的です。
このダニは、ミミダニや耳疥癬とも呼ばれており、愛犬が痒がって耳を掻く頻度が高く、耳の中に黒い耳垢が大量に発生することが特徴と言えます。
この黒い耳垢は吸血した耳ヒゼンダニの糞で、ウェットティッシュで拭き取ると赤い血の色に変わります。
耳ヒゼンダニは、一般的な家ダニなどと比べても非常に小さく、人間の肉眼では見えません。
犬から犬へとダニが渡り歩いて感染させるため、多頭飼いの飼い主は注意が必要です。
動物病院で耳を徹底的に洗浄し、抗生物質を投与すれば回復するでしょう。
ただし、治療後も警戒を怠ってはいけません。
抜け毛に付着したダニが再度愛犬の耳に侵入するおそれがあるからです。
頻繁にお風呂に入れて、体毛に潜り込んだ耳ヒゼンダニを完全に除去することが求められます。
抜け毛が落ちていそうな床などを丁寧に拭き掃除することも大切です。
異物が原因の痒み
空中を浮遊する異物が耳の中に入って痒みの原因となることがあります。
散歩中、風に乗って飛来したタンポポなどの植物の種が、犬の耳の中に飛び込んでしまうと、種が外耳を刺激し、痒みを引き起こすのです。
愛犬の耳が痒くなる前に、耳の中を定期的にチェックしましょう
愛犬が痒がっても放っておく飼い主が多いですが、耳の痒みを侮ってはいけません。
内耳で炎症を起こすと、神経に悪影響を及ぼし、日常生活に著しい弊害をもたらすからです。
また、耳の痒みが激しいと、愛犬に相当のストレスを与えることから、犬が精神的に参ってしまうこともあります。
犬の痒みが重大な病気のサインとなる場合は、既に耳の中で耳垢の色や皮膚に異常をきたしているケースが少なくありません。
特に、垂れ耳の犬は耳の中の通気性が悪くて耳の病気に罹患しやすいので、頻繁に耳の中をチェックしてあげましょう。