犬の耳の色は、通常白か薄いピンクで、赤や黒に変色したら要注意です。愛犬の様子を日頃から観察している飼い主は、犬の耳が黒くなったら気になるでしょう。
犬の黒い耳は、様々な兆候を示しています。特に、他の犬にも感染する病気のサインの場合もあるので、飼い主は注意しなければなりません。
病気の場合、犬の耳の色とともに、併発するその他の症状に関しても飼い主は知っておくことが必要です。
犬の耳が黒い原因に加え、黒い耳に関連する病気や対策について解説しましょう。
犬の耳が黒い原因は?
耳の中の汚れにより黒くなる
愛犬の耳が黒いのは、汚れがこびりついているからかもしれません。
ダックスフンドやアメリカンコッカースパニエルをはじめ、ビーグルやラブラドールレトリバーといった垂れ耳の犬種は、耳が密封されていて通気性が悪く、梅雨など湿度の高い季節に耳の中が蒸れてしまいます。
すると、耳の中がべたついて黒い汚れが付着してしまうのです。
シーズー・ヨークシャテリア・トイプードルのように耳の中の被毛が濃い犬種も、耳の中の通気性が低く、汚れが付きやすいと言われています。
飼い主が日頃から耳垢の掃除をしてあげれば、こうした黒い汚れは付きません。
ダニが原因の場合
耳疥癬とも呼ばれるミミヒゼンダニが犬の耳の中に寄生すると、大量の黒い耳垢が出ることもあります。
この黒い耳垢は、犬の血を吸ったり、耳垢を食べたりするミミヒゼンダニの糞で、穿り出してつぶすと赤い血の色に戻るものも散見されます。
この大量の耳垢を放置すると、耳の中が不衛生になって炎症を引き起こすのです。
ミミヒゼンダニは、他の犬や猫から移ることが多いものの、直接他の動物と接触しなくても、ダニの成虫や卵が付着したカーペットやベッドの上に寝そべるだけで感染します。
また、飼い主が、ダニを持つ他の犬や猫に接した際、衣類にミミヒゼンダニの成虫や卵が付いてしまい、そのまま帰宅して愛犬に移すこともあるのです。
異物が耳の中に入って炎症を生じる
散歩中、犬が草木をかき分けて歩いていた際に小さな虫や植物の種子が耳の中に入ったり、シャンプーしている時に耳の中に水が流れ込んだりすると、外耳などに炎症が起きて、耳垢が黒くなる現象も見られます。
垂れ耳の犬は異物が混入しにくいのですが、耳の中の被毛が多い犬種はいったん異物が入るとなかなか出てこないので、飼い主が外出後に耳の中を掃除してあげましょう。
犬の耳が黒い時に併発したら注意すべき症状
耳が黒くなった犬は、耳から異臭が漂ったり、黒い部分が腫れてきたりするといった症状も生じやすいです。
また、痒みを振り払うかのように、頭を何回も振る動作も多くなります。
こうした症状が出たら、耳の中で炎症を起こしている可能性が高いことから、獣医の診察を検討しなければなりません。
さらに、耳だれを起こし、耳の中が常にじっとりしていて愛犬が不快感を示す場合は、中耳炎が疑われるでしょう。
中耳炎が進行すると、目の焦点が合わなくなるため、犬はしょっちゅう首を傾げたり、顔を引きつらせたりします。
また、飼い主が犬の体に触れることも嫌がるようになります。
それから、犬が耳に激しい痒みを感じてしきりに首を振ったり、足で耳をボリボリ掻いたりするケースも要注意です。
耳ばかり気にして、ときには痒さのあまり耳をコンクリートなどにこすりつける犬は、ミミヒゼンダニが寄生している可能性があるからです。
犬の耳が黒い原因になる病気
耳ダニ感染症
ミミヒゼンダニの寄生により発症する耳ダニ感染症に罹患した犬は、ダニが耳の中の分泌物を摂取するほか犬の血も吸収するので、アレルギー性過敏反応を引き起こします。
ミミヒゼンダニのサイズは、0.3ミリから0.5ミリ程度と非常に小さいことから、人間が肉眼で確認し、ピンセットなどを使って摘出できません。
放っておくと、耳の中が腫れて細菌の繁殖を促し、炎症が慢性化しやすく看過できない病気です。ミ
ミヒゼンダニは、耳の中だけでなく、お尻や尻尾まで活動領域を広げることもあり、早期の発見と駆除が欠かせません。
酵母菌による外耳炎
マラセチア菌という酵母菌はカビの1種で、どの犬の外耳道にも常在しています。
酵母菌の栄養源となっている皮脂の分泌が促進されると、異常繁殖して外耳炎を生じさせます。
黒い耳垢が大量に出るので、耳が黒くなってしまうのです。
細菌性外耳炎
酵母菌と同様に、細菌も増殖すると外耳炎の原因になります。
犬の免疫が下がったり、湿度の高い時期に耳の中の湿気が滞留したりすると、細菌が元気になって外耳炎を引き起こすのです。
外耳炎を発症しても、速やかに動物病院で抗生剤を投与してもらえば、短期間で完治します。
放置するとアレルギー反応が酷くなり、点耳薬だけでは治療が難しくなるため、早期発見が欠かせません。
中耳炎
外耳炎だけでなく、中耳炎によっても耳が黒くなります。
外耳炎が悪化すると、鼓膜の奥にある中耳まで炎症が広がってしまうのです。
外耳炎より耳の激しい痛みを伴いやすく、抗炎症薬の内服が必要になるでしょう。
犬の耳が黒いときの対策
長期にわたって愛犬の耳掃除を怠っていた場合、犬の耳が黒くなっていたとしても、その他の症状が見られなかったら、黒い汚れを掃除してもかまいません。
犬の皮膚を傷めないよう配合された犬専用の洗浄液で拭き取って綺麗になるのならば、耳垢が黒く汚れただけにすぎず、特に健康に問題はないでしょう。
しかし、愛犬の耳に異臭や腫れといった症状が生じ、激しく頭を振ったり耳を足で掻いたりする動作が頻繁に見られたら、病気を疑ってそのままの状態で動物病院へ連れて行かなければなりません。
獣医は耳垢の色・量・臭いなどの様子を観察して原因を究明するので、受診の前に耳垢を除去してはいけないのです。
日頃から愛犬の耳掃除を心がけ、耳の色の変化に注意しましょう!
愛犬の耳の色の変化は、日頃から健康状態をチェックしていないと、なかなか気づきにくいものです。
ブラッシングとともに、定期的な耳掃除を行い、耳垢を除去して耳の中を清潔に保ちましょう。
もし、耳が黒く変色していることに気付いたら、その他に病気の兆候となるような症状が現れていないか確認し、少しでも疑わしければ動物病院へ連れていくことが望ましいと言えます。
獣医に診察してもらう前は、耳垢を取らずそのままの状態にしておくことを忘れてはいけません。