愛犬が震えているかも?と思ったり、痙攣を起こしてしまった時、多くの飼い主様はすごく戸惑って焦ってしまいますよね。
寒いのかな?なんで震えているのかな?と心配になってしまう方も多いと思います。
原因は様々ですが、すぐに対処した方がいい場合と少し様子を見ていい場合があります。
困った時に落ち着いて対応できるように、少しだけ知識を持っておきましょう。
犬の痙攣とは
痙攣といえば、全身がガタガタしてしまう痙攣を思い浮かべる方が多いと思いますが、それだけではありません。
痙攣とは、自分の意志とは関係なく、勝手に筋肉が動いてしまう症状のことと定義されています。
つまり、痙攣と言っても全身性のものだけではなく、
- 「片方の手足、顔だけがつっぱる、震えている」
- 「手足が一瞬ピクっとなる」
- 「筋肉がピクピクする」
- 「足がつる」
といった軽い症状を指している場合もあるんです。
痙攣を生じる原因は、
- 高熱
- 薬物中毒
- 血糖や電解質の異常
- 心臓の病気
- 脳卒中・脳炎
- てんかん
など多岐にわたります。
脳~脊髄~末梢神経~筋肉とあらゆる場所が原因となるため、どの場所でどんな障害で生じているのかを明らかにすることが重要です。
そして、神経の異常ではなく、身体の中の他の病気、精神科的な問題や痛み、寒さで震える場合もあります。
一口に痙攣と言っても、考えなければいけない原因が沢山ある、と思っておいてくださいね。
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犬の痙攣を起こす病気
前述したように、犬が痙攣を起こす疾患はたくさんありますが、年齢や犬種、症状の特徴、全身の状態などから、大まかに原因を推定した上で、さまざまな検査が必要になります。
まずは痙攣を起こす代表的な病気について、簡単に解説していきます。
てんかん
てんかんとは、大脳と呼ばれる場所で突然発生する神経の興奮が引き起こす発作のことです。
脳の中に原因がある場合と、脳に何も異常が無いにも関わらず起こってしまう場合があります。
つまり、脳内に異常があって起こる発作も全ててんかん発作と呼べてしまうため、この名証は特定の疾患を表す呼び方ではないので注意しましょう。
診断には脳のMRI検査が必要です。
麻酔をかけた検査になりますが、確実な診断が得られるため、てんかん発作と診断された場合は、抗てんかん薬を使用して発作の頻度を極力減らすようにしていきます。
慢性腎臓病
腎臓病の末期になると、腎臓で濾過できなくなった老廃物が血液中に増えすぎてしまい、それらの老廃物が脳や肝臓などの臓器にダメージを与えることで、発作を起こしてしまうことがあります。
腎臓病のわんちゃんがみんな発作を起こすわけではなく、発作症状に至るほどの数字になる前に、
- 食欲が低下する
- 吐き気を催す
- 意識レベルが低下する
などの症状が現れる可能性が高いです。
すでに腎臓病を診断されている子は、こまめに血液検査を行なって、数字の変動をチェックしてあげましょう。
先天性疾患
1才以下の若い年齢から発作を起こしてしまう場合は、先天性の疾患や感染症を強く疑います。
例えば、門脈体循環シャントと呼ばれる血管の奇形や、水頭症のような脳内の奇形などが先天性疾患の代表的なものとして挙げられます。
主な症状はぼーっとしている時間が増えたり、最終的には発作を起こしたりしますが、これらは見た目での診断は難しく、血液検査やCT,MRIなどの高度な画像検索が必要になります。
脳腫瘍
比較的高齢になってから発生し、進行性に症状が悪化していくのが特徴です。
脳に腫瘍があるかどうかの確定診断も、やはりMRI検査が必要となります。
高齢になってから初めて発作を起こした場合は、腫瘍の可能性があるので、MRI検査の実施が推奨されます。
ただし、外科手術や放射線治療などの脳内への治療のアプローチは、動物では現在限られた施設でしか実施されていません。近隣の先生に相談してみましょう。
中毒
近年は、犬にとって中毒症状を起こす物質や食べ物が多く分かってきています。
例えば代表的なものでは、タマネギやチョコレート、ぶどうや植物の球根、ネズミ駆除剤などが挙げられます。
これら全てで痙攣が必ずしも起こるわけではありませんが、起こってもおかしくない症状の1つです。
また、重度なアレルギー症状である、アナフィラキシーショックも発作や痙攣の様子と似ています。
ドッグフード以外のものや、新しい食材、人間の薬の誤食などを疑う場合は、必ず動物病院に相談しましょう。
犬の痙攣に似た症状
犬が震えていたりした時、飼い主さんは心配になってしまうと思いますが、病的なものではない場合もあります。
その症状が病的かどうかを見極めるのは簡単ではありませんが、まずはこれまで記述したように、動画に症状を収めて、実際に動物病院でその動画を見てもらうのが1番正確に伝わるはずです。
では、病的ではない場合とは一体どんな場合でしょうか?
睡眠時に動く
寝ている時、動物も夢を見ると言われています。
もし、愛犬がぐっすり寝ている間に突然ピクピクと動き出した場合は、夢を見ている可能性があります。
心配であれば、一度声をかけて起こしてみるのもいいでしょう。
声をかけてみて、すぐに起き上がりいつも通りの反応を見せた場合は、心配は要りません。
緊張、寒さ、痛みによる震え
動物が目を覚ましている状況で、立ったまま、もしくは丸くなって震える場合もありますよね。
これを専門用語では「振戦」と言ったりしますが、この症状を起こす原因は多くが、寒い・痛いのどちらかです。
全く寒い環境ではなく痛みもない、元気や食欲もあると言った場合は、怖い・不安と言った感情で震えてしまう子もいます。
また、老犬の場合は筋肉の衰えなどによる老化に伴う小刻みな震えが起きてしまうこともあります。
意識がある状態で震えている場合は、まずは痛みや寒さがないかを確かめましょう。
犬の痙攣の対処法
痙攣が起きてしまった場合、家ではどのように対処すべきなのでしょうか。
いざという時に調べていると時間がないので、事前に簡単なことを頭に入れておくと安心ですね。
大事なことから順に記していきますが、できるところから始めても構いません。
- まず周りに危ないものがないかどうか確かめ、それらを犬から離します。
- 動画を撮り始め、意識がない場合は呼びかけて反応があるか確かめます。
- 発作が起きている場合は、無意識に顎に力が入り、近くのものを噛んでしまう可能性があるため、口に手や物を入れたりしない。
- 撮影しながら、手があいている人がいれば、すぐに近くの動物病院に連絡をしましょう。
全身の状態に加え、顔の動きや目の動きを確認しながら動画撮影すると良いでしょう。
抗けいれん薬があれば使う
普段から発作が過去に起きたことがある、今後も起きる可能性の高い病気を持っている場合は、抗けいれん薬を処方されている場合があると思います。
もちろん、その子の体重に合わせて適切な量が計算され頓服として処方されている場合に限り、それらが手元にある場合は、すぐに使ってあげましょう。
ただし、発作中に口から物を入れたりすることは困難なので、鼻から噴霧するタイプや、お尻の穴から入れるタイプなどを常備することをお勧めします。
普段1日2回で使っているお薬を飼い主様の判断で3回にするなどの、普段のお薬の調節は、発作が落ち着いた後に先生と話し合って決めていきましょう。
副作用の観点から、薬には必ず使っていい安全な量が決められていますので、増量は慎重に行います。
痙攣は10分以上続くと命に関わる
痙攣が連続して10分以上つづく場合を重積発作といいます。
この発作は脳に大きなダメージを与える可能性が高く、至急発作を止めなければいけません。
発作を止める薬を数種類使う場合もあります。
発作が止まっても、その後脳のダメージが残ってしまい、体や口の動作が不自然になってしまうことも。
1-2分で治らない場合は、すぐに近くの動物病院に連絡しましょう。
病院へ行くタイミング
症状が、意識を無くしてしまう全身性の発作であれば、発作が起きるたびに脳へのダメージが蓄積されるため、まずは発作であるかの確認を含めて、病院で相談しましょう。
治療を開始する基準としては、半年に2回以上の発作が起きる場合、とされているので、これ以上の回数の発作が見られている場合はすぐに治療を開始すべきです。
また、本人の体調も優れない場合は必ず受診をお勧めします。
病院へ行くときの注意事項
神経系の診断で最も重要なのは、実際に発作が起こっているときの様子を伝えることです。
しかし、実際には病気に行く頃には治っている場合や、病院では緊張していて家と同じ症状が出ないことがほとんどです。
つまり、飼い主さんがどんな症状だったかをしっかり覚えておくことがとても重要です。
発作が起きていても、病院に行くまではできることが少ないので、まずは慌てずに発作の様子をケータイなどで動画に収めましょう。
病院では以下のことを聞かれる可能性が高いですので、頭の片隅に入れておきましょう。
もしこれらを全て覚えてなくても、動画があれば口でうまく説明できなくても安心ですね!
- どんな発作だったか
- 意識はあったか(呼びかけに反応したか)
- どのくらいの時間続いたか ・直前、直後、痙攣中に失禁は排便が見られたか
- 近日中に誤食したもの、草や人の薬を食べた可能性はないか
など発作の様子、症状が起こっている時の動画を見せることで正しい診断に繋がる可能性があります。
愛犬が痙攣したらよく観察して病院へ
痙攣の原因はこれまで書いてきたように、とてもたくさんあります。
その子が今どんな原因で痙攣をしているかによって、発作の抑え方や対応方法も変わってくるため、きちんとした診断が必要になってきます。
きちんと診断して、治療に繋げるためにも、おうちでも様子をまずはしっかり観察してあげてくださいね。
参考文献
・日本神経学会ホームページ
・獣医神経病学会ホームページ
愛犬の他の病気に関しても紹介しています。
https://coco-gourmet.com/archives/284
https://coco-gourmet.com/archives/286