犬のしゃっくりを初めて見た方は、
- 「けいれん発作なのだろうか?」
- 「病院に今すぐ行くべきなのか?」
- 「何に注意し、いつまで様子を見ていいの?」
など不安に思うことがあるかもしれません。
この記事では、犬のしゃっくりと気を付けたい他の病気について獣医師目線から簡単に解説をしています。
愛犬のしゃっくりが起きる理由
人間のしゃっくりと同様、犬も横隔膜がけいれんすることで発生すると言われています。
横隔膜はすべての哺乳類に備わる、胸腔と腹腔を隔てる膜状の臓器です。
臓器である以上、そこには必ず血管や神経が通っています。
また、横隔膜は胃との距離が近いため、その影響が出やすいとされています。
人間のしゃっくりの定義は「繰り返す不随意な横隔膜の反射性収縮とそれに引き続く突然の声門閉鎖」となっています。
しかし、犬のしゃっくりでは「ヒックヒック」という声は出ません。
また、犬のしゃっくりの定義はまだ決まっておらず、詳細な発生メカニズムも分かっていません。
そのため人間とは異なり、しゃっくりの分類はされていないのが現状です。
愛犬のしゃっくりの原因
先に述べたように、横隔膜が刺激を受けることでしゃっくりは発生します。
では具体的にどのような状況で発生すると考えられるでしょうか。
早食い
子犬だと、ものの数秒でご飯がなくなることもしばしばですよね。
早食いにより空気を同時に飲み込んでしまうことで、胃内にガスが溜まり、急激に胃が膨張します。
それにより横隔膜が刺激されます。
また、
- 大型犬
- ダックスフント
- ウェルシュコーギー
などの犬種は胃拡張胃捻転の多い犬種のため、早食いは特に注意が必要です。
ご飯の大きさ
ドッグフードには様々な大きさの粒が用意されています。
体格のわりに大きな粒が胃内に入った場合にも、膨張した胃がしゃっくりを引き起こすと考えられます。
そのため、愛犬に合ったフードをいくつか試してみましょう。
不安や緊張
不安や緊張状態の犬は、人間と同様、交感神経が活性化します。
交感神経が活性化すると、神経がいわゆる興奮状態となり、横隔膜の神経が過剰に反応します。
その結果、しゃっくりが生じてしまうと考えられます。
胃の動きが悪い
詳細は疑うべき病気の項で記載しますが、胃の動きが悪くなる原因は多岐にわたります。
胃の動きが悪くなることで胃内にガスが異常発生し、胃が膨張します。
また、胃腸の蠕動運動が停滞することでも胃が膨張してしまいます。
胃が冷えている
冷たいものを急に飲むことで、食道や胃の筋肉が収縮し、それが横隔膜の刺激になることもあります。
特に夏の暑い日には飲ませすぎに注意しましょう。
肥満
意外かもしれませんが、これも関与していると考えられます。
肥満により内臓脂肪が増えることで、腹腔内圧が上昇し、横隔膜が刺激される原因になります。
肥満かどうか気になったら獣医師に確認してみましょう。
愛犬のしゃっくりの対処方法
喉を撫でてあげる
喉を撫でたりすることで、症状が落ち着くこともあります。
基本的には単なるしゃっくりであれば、何もせず様子を見てあげても良いでしょう。
ただし、気管虚脱などの病気の場合は喉を刺激することで咳が悪化する場合もあります。
したがって喉を撫でる際にはしゃっくりなのか咳なのかを確認してから優しく行ってください。
飼い主さんの指などを舐めさせる
飼い主さんの指を舐めさせることで、愛犬を落ち着かせるのも有効でしょう。
しゃっくりが止まらず不安に感じる犬もいますので試してみてください。
指先に缶フードなどを少しつけて舐めさせるのも良いでしょう。
繰り返し舐めさせることでしゃっくりが止まることもあります。
しゃっくりを忘れさせる行動をする
神経質な犬では自分のしゃっくりに驚き、不安の原因となるかもしれません。
先ほど述べたように、単なるしゃっくりであれば基本的には心配いりません。
ベランダに出したりしてしゃっくりを忘れさせる工夫をしてみましょう。
また、普段行っているお手やお座りなどのコマンドを使ってみるのも良いと思います。
数秒だけ呼吸を止める
しゃっくりを止めるために、人では呼吸を止めるという方法がありますが、犬でそれを行う際には注意してください。
呼吸を止める方法は口を閉じ、鼻にそっと指を添えることで呼吸を止めることができます。
しかし、しゃっくりと思っていても実は呼吸が苦しくなる病気のこともあります。
そのため不安であれば無理に呼吸を止めることはやめておきましょう。
マッサージ
マッサージも犬を落ち着かせるためには有効です。
頭から背中にかけてゆっくりと優しく声をかけながら撫でてみましょう。
水を飲ませる
しゃっくりが出たら、水を飲んでくれるのであれば、水を飲ませて落ち着かせてみましょう。
しかし、人と違って素直には飲んでくれない子もいるかと思います。
飲んでくれない時には水に味をつけたり、缶フードを混ぜたりしてみましょう。
ただし、飲ませすぎると吐いてしまいますので注意してください。
運動させる
散歩が好きな子であれば散歩に連れて行くのも良いでしょう。
また、室内でボール遊びなどを運動させてみるのも有効です。
ただし、パンティング(開口呼吸)をしていたり、呼吸が苦しそうな場合には過度な運動はさせないようにしましょう。
病院へ行く
次の項目で気を付けるべき症状について詳しく述べたいと思います。
しゃっくりが1時間以上続いたり、呼吸が苦しそうな場合など不安に感じたら病院に連れて行きましょう。
その際には落ち着いて動画を撮影してください。
撮影した動画を獣医師に見せ、必要な検査などの判断を仰ぐようにしましょう。
愛犬のしゃっくりで疑うべき病気
消化器疾患
そもそも犬は人ほどにはしゃっくりをしません。
しかし、病気が原因でしゃっくりが起こることもあります。
消化器の病気がまず挙げられます。
横隔膜を刺激するような疾患があった場合にしゃっくりは生じます。
横隔膜に生じた腫瘍でも持続的に横隔膜の神経を刺激してしまいます。
また、胃や腸の流れが著しく悪くなった場合にも胃が膨張し横隔膜を刺激することもあるでしょう。
消化管の蠕動運動が低下する疾患として、胃や腸の腫瘍、誤食、腹膜炎などが挙げられます。
特に気を付けるべき疾患に胃拡張胃捻転症候群があります。
この疾患の場合は、ぐったりして、吐きそうなのに吐けないというのが主な症状です。
胃拡張胃捻転症候群は命にかかわるため、すぐに病院に行きましょう。
寄生虫感染
消化管内に寄生した寄生虫によってもしゃっくりが出るかもしれません。
よく出会う消化管内寄生虫として犬回虫や瓜実条虫、まれに鞭虫類も認められます。
いずれもペットショップやブリーダーから迎えた際に発見されることが多いです。
厄介なことに消化管内寄生虫は症状があまり出ないこともあります。
これらの寄生虫は犬糸状虫(フィラリア)予防薬や駆虫薬が有効です。
呼吸器疾患
呼吸器疾患が原因となる例もあります。
- 気管虚脱
- 気管支炎
- 喘息
- 肺炎
- 胸膜炎
- 肺腫瘍
などの呼吸器疾患はしゃっくりと見分けなくてはなりません。
パンティングが異常に続いたり、咳やくしゃみが出ていないか確認しましょう。
また、病気でなくても逆くしゃみのこともあります。
分からない場合には動画を取っておきましょう。
https://coco-gourmet.com/archives/287
脳の病気
脳疾患などで脳の神経に異常がでると、症状の一環としてしゃっくりが出ることもあります。
脳からの情報伝達により体は動いています。
脳疾患にかかってしまうと脳からの情報伝達に異常が生じてしまいます。
代表的な病気に、てんかん発作や脳梗塞などがあります。
しゃっくりに付随して、呼吸困難や痙攣などがある場合は、できるだけ早く獣医師に相談しましょう。
循環器疾患
心臓の疾患が悪化した場合でも呼吸が苦しくなることがあります。
その結果ぜーぜーと苦しそうにしたり、咳が出たりします。
心臓病の代表として、高齢犬では弁膜疾患、猫では心筋症が挙げられます。
いずれも命に大きくかかわってきますので必ず病院へ行きましょう。
https://coco-gourmet.com/archives/288
愛犬のしゃっくりの予防方法
食事をゆっくり食べさせる
病気が原因の場合には効果はありませんが、まずは早食いをやめさせましょう。
前述のように早食いによる胃ガスが溜まることで横隔膜が刺激されます。
そのためまずは犬が慌てて一気に食べない工夫をしてみましょう。
また一回の食事量を減らし回数を増やすことも有効です
ペットショップ等で様々な商品が売られていますので参考にしてください。
ご飯の見直し
粒の小さいフードへの変更やふやかしにすることでしゃっくりを予防できます。
たっぷりのお湯にドライフードを浸し、ラップをかけることでふやかすことができます。
あらかじめドライフードを砕いたうえで行うと時間を短縮できます。
ウェットフードは冷ましてから与えましょう。
おすすめは手作りご飯のココグルメです。
ココグルメは、食材はすべて人間の食品に使用される食材(ヒューマングレード)を使用しており、学校給食を手がける給食工場で1つ1つ人の手で作っています。
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興奮させない
過度の興奮がしゃっくりの原因のこともあります。
したがって愛犬がリラックスして落ち着けるような環境を整えましょう。
前述のように指を舐めさせたり、撫でたりして興奮させないことでしゃっくりを予防します。
運動させる
適度な運動もしゃっくりの予防に有効です。
ただし、呼吸が苦しくなるような病気の場合には運動は危険な場合があります。
そのためまずは単なるしゃっくりであることを確認しましょう。
病気かどうかの確認は上述していますので参考にしてみてください。
愛犬の睡眠中のしゃっくりは問題ない?
犬は睡眠中にもしゃっくりをすることがあります。
また、犬は夢を見たり、寝言を言ったりすることもあります。
たまに寝ている犬がバタバタと足を動かしたり、ビクッとしたりするのも夢を見ているからでしょう。
犬の 睡眠中のしゃっくりは、夢を見ている時や寝言を言っている時に起こります。
日中にしゃっくりをせず、寝ている時にだけしゃっくりをする場合には、特に問題がありませんのでそのままにしておいて大丈夫です。
しかし、てんかん発作とは見分けなくてはなりません。
発作の場合、一定の間隔ではなく、不定期にけいれんが起こります。
また、呼吸が苦しそうにしている場合にも必ず状態を確認してください。
不安であれば動画を撮影し獣医師に相談しましょう。
【コラム】愛犬のしゃっくりに似ている症状
咳
咳は肺や気道の病気、あるいは心臓の病気で起きます。
- 気管虚脱
- 気管支炎
- 喘息
- 肺炎
- 胸膜炎
- 肺腫瘍
といった病気はX線検査やCT検査をしなくてはなりません。
また、心臓の弁膜疾患や心筋症でも胸腔内に液体が貯留したりすることもあります。
その際には超音波画像検査を行います。
いずれの疾患も命にかかわることが多いため、定期的な検査と継続治療が必要です。
くしゃみ、逆くしゃみ
くしゃみは主に鼻の中の病気で生じます。
特に鼻血が出る場合には要注意です。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、鼻腔内腫瘍といった疾患が挙げられます。
鼻腔内腫瘍はX線検査やCT検査が必要ですが、予後はかなり悪いです。
一方で逆くしゃみは基本的には心配いりません。
逆くしゃみは発作的に生じますが、発生のメカニズムは不明です。
しばらく様子を見て落ち着かせてあげましょう。
吐き気および嘔吐
しゃっくりともっとも見間違えやすいのは吐き気でしょう。
しゃっくりは口を開けませんが、吐き気の場合は口を開けてえずき、よだれも出たりします。
また、しゃっくりは定期的に出るのに対し、吐き気の場合は不定期となる点も鑑別ポイントとなります。
嘔吐は様々な原因で発生するため血液検査やX線検査、超音波画像検査などいくつか行う必要があります。
さらに、しゃっくりの場合は食欲は落ちませんが、吐き気がある場合は食欲が堕ちることがしばしばあります。
そのため獣医師に必ず食欲の有無を伝えましょう。
愛犬のしゃっくりから病気を予防しよう!
一般的には犬のしゃっくりは様子を見ていても問題ありません。
まずは慌てず動画を撮影し、落ち着かせてみましょう。
ただし、いくつかの落とし穴もありますので必ず上述の内容をチェックしてください!
いかがでしたでしょうか。
今回はしゃくりについて書かせていただきました。
今後もみなさまの幸せな愛犬ライフが送れることを祈っております!
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